小学校の柵沿いの歩道を歩いていた。 ちょうど放課後の時間らしく、校庭には子供たちが溢れて大変な騒ぎ。
校庭の端にある倉庫のような建物の裏に、女の子が一人駆け込んできた。 裏の壁に張り付き、そーっと顔だけ出して校庭の様子を伺っているのは、どうやらかくれんぼの最中らしい。
しばらく校庭の様子を伺って安心したのだろう。 くるりと反転して、壁にもたれて、ふうっと大きく息を吐いた。 で、顔を上げてこっちを見たと思ったら、 「あっ! 先生っ! せーんーせー!」 と、ぴょんぴょん跳びながら手を振り始めた。
一瞬、 「え? 俺?」 なんて驚きつつ、視線を追って振り返ると、幼稚園のバスが通り過ぎるところだった。 バスの中で、先生らしい女の人が両手を大きく振っている。 満面の笑顔で。 再び振り返ると、女の子も満面の笑顔。 幼稚園のバスが見えなくなるまで、もう全力で手を振っていた。
バスが見えなくなり、何となく足を止めていた俺も歩き出した。 背中から、女の子の声が聞こえてくる。
「ねえ、今の、先生?」
「うん。 幼稚園のときの」
「ふーん。 なんか優しそう」
「うん。 優しいよ」
「ふーん。 あ、そうだ。 みーつけた!」
「え? あ…あはは…見つかっちゃった」
「大声出してるからすぐわかったよ」
「あはは」
まあ、楽しそうでいいことだ。 そう言えば、かくれんぼを最後にやったのって、いつだったろう。 もう思い出せないな。