魔王の珈琲
戸棚の中に未開封のインスタントコーヒーが並んでいた。 まだ呆ける前の父が買ったものだ。 コーヒーは賞味期限が長いから安売りしてたら買っておくのだと、聞いたことが有るような無いような…。
しばらく前にそんな状態であることに気が付いて、その日からせっせと消費しているのだが、どうやら順番を間違ったらしい。
最初に手に取ったのが賞味期限2013年。 古い。 とても古い。 飲んでもいいものかちょっと心配になる古さ。 だから確かめもせずにこれが一番古いだろうと思ったのだが、そいつを飲み切った後に出てきたのは、賞味期限2011年だった。 その次も賞味期限2011年。

そしてこいつが最後のコーヒー。 賞味期限2009年。
賞味期限はもう12年も前だが、開封すればコーヒーの香りがし、飲めばコーヒーの味がした。 悪くない。
そんなコーヒーを飲みながら考えるに、順番はこれで良かったのかもしれない。
いきなり2009年に挑めば、腹を壊していたかもしれない。 駆け出しの勇者が魔王に勝てないように。 2009年物を飲んで 「普通にコーヒーだな」 と思えたのは、まずは雑魚で、次に中ボスで、経験値を積んだからだ。
今なら何にでも勝てる気がする。