出張先に持っていっている会社のPCのセキュリティ設定を変えなきゃならなくなって、会社に戻ってその作業。 このPCが、CPUが Pentium M という骨董品で、何をやるにも遅い。 セキュリティ設定変更も、ボタンを押しては数時間待つことの繰り返し。 テンション下がる。 まあ、たいてい低いけど。
「どうですか?」
「もうすぐ終わりそう。 インストール後のクリーンアップだってさ」
「ああ、それがラスボスですよ」
「そうなの?」
「ええ」
「あー…まだ待つのか…。 ラスボスって、たいていは強くて攻略に困るんだよね?」
「そうですね」
「もっと違う方向はどうだろう。 例えば、物凄く可愛くて、攻撃すると心が痛むから攻撃出来ないとか」
「それは確かに新しいですけど、ゲームになるんですか?」
「するんだよ、前向きに」
「はあ」
「レッサーパンダとか、どう?」
「レッサーパンダですか」
「あ、自分で例に出して言うのもなんだけど、あんまり可愛くないか」
「え? 可愛いじゃないですか、レッサーパンダ」
「騙されてるんだよ、それ、模様に」
「いや、本当に可愛いですよ、ほら、これ」
「そんなことで画像検索しなくていいよ。 でもほら、パンダと同じで目付き悪いじゃん」
「そんなことないですよ」
「あと、小さいとたいてい可愛く見えるからね。 ゴジラだって5cmぐらいなら可愛いよ、きっと」
「こんなぐらいのゴジラですか?」
「そう。 鳴き声もちょっと甲高い感じで」
「あー、可愛いですかね」
「まあ、放射能を吐く嫌な奴なんだけどね」
「そう言えば放射能でしたね、あれって」
「放射線じゃなくて放射能ってのがポイントね。 浴びた相手が放射線を出す能力を得るという」
「むしろ相手の方が強くなりそうじゃないですか?」
「放射線を出す方向を選べないんだよ。 体内にも放射してるんだね」
「ああ、なるほど」
「長期的な視点で攻撃してるんだよ。 癌になって、ずっと苦しんで死ぬんだね、やられた方は」
「うわ、そう考えると本当に嫌な攻撃ですね、放射能って」
「だろ?」
そんな暇潰しの会話も、長い待ち時間には一瞬のこと。 彼の言葉通り、クリーンアップはこの後4時間待っても終わらず、結局PCを放置して帰り、翌朝(と言うのは今日のことだが)7時に会社に行って続きをやることになったのだった。