一人暮らしは気儘でいいのだが、何かと世話を焼いてもらう生活も、たまにはいい。 たまにだけど。
父は最近仕事を辞めて、今は気楽な(?)年金暮らし。 朝から釣りに出かけ、デジカメで写真を撮りまくり、インターネットにも手を出そうとしているらしい。 ネットへの接続はまだ成功していないようだが。 と言うか、プロバイダーとの契約が必要なことに、最近気が付いたらしいけど。
お父さんね、寝言で歌を歌うのよ。 何かすごい楽しそうに。 それで、散々歌ったあとでね、 「上手いじゃろうが」 って言って、また歌い始めるの。
そう言って笑う妹に、かつて、広島で暮らしていたころのことを思い出す。 当時の父は、夜中に寝言で悲鳴を上げることが多かった。 ちょっと洒落にならないレベルのボリュームで。 「数字に追いかけられる夢を見ているらしいよ。 お父さん、営業だからねぇ」 なんて、母が言ってたっけ。
まだ仕事をしていなかった俺は、その苦労が今一つぴんと来なかったのだが、今なら少しは判る。 その苦労が、本人の能力に由来するものか、(適職を選べなかったことも含めた)不運の故かは判らないが。 だからと言って、酒に溺れていい訳ではないのだが。