まさかこんな時期に台風が上陸するとはね。 ま、上陸した現場の中四国はともかく、この辺りだとせいぜい紫陽花の開花を早めたぐらいだけど。
目の前を歩いていた大学生二人の会話。
「俺、あいつからタバコやめろって言われたんだけどさぁ」
「まじ? やったじゃん」
「え? なんで?」
「だって、タバコやめろって言うのは、お前のこと気にしてくれてるからだろ?」
「そうかぁ?」
「そうだって。 俺も付き合う前に彼女に言われたし」
「タバコやめろって?」
「タバコ吸わない子は、タバコ臭いの嫌いなんだって」
「あぁ、そりゃそうかもな」
「そうだよ」
「そっか…じゃああいつ、けっこう俺のこと好きなのか…やった!」
「やった!」 なんて言っている奴の背中が本当に嬉しそうだった。 ちょっと羨ましいな。 こんな都合のいい解説で喜べる単純さがね。 いや、単純さと言うよりも、ある種の自信を持っているところが、か。 自分が誰かに好かれるということを、そんな風にあっさりと受け入れられるのは、やっぱり自信があるからだろう。 俺は、そっち方面の自信はかなり無いからなぁ。 と言うか、そんな他人の他愛も無い話に反応してしまうところが、もう全然駄目って感じだな。