今日から仕事始めのところも多いようだが、俺はもう少し休み。 少し空いてることを期待して国立西洋美術館でやってる 黄金伝説 古代地中海世界の秘宝 に行ってきた。
ほんの1ヶ月ぐらい前に THE ART of BVLGARI を見たばかりなので、紀元前の装飾品は見劣りするんじゃないかと思っていたのだが、全然そんなことは無かったな。 遜色無いと言うか、ベクトルが違う。 ブルガリの金が割と大きな面積の歪みの無い綺麗な曲面を作ることを重視しているのに対し、古代地中海の方は細工の細かさに命をかけている感じだった。 さすがに6000年も前の物は形も歪で細工も大雑把だったが、紀元前7世紀頃のイタリアの金細工はもう超絶技巧。
紀元前7世紀頃のイタリアは、ローマ以前、エトルリア人の世界。
このエトルリア人の金細工は小さな金の粒を使うのが特徴なのだが、これがもう何かに取り憑かれているとしか思えない程の細かさ。 小さい物では0.02mmとか、俺の視力じゃ粒が判別できない。
そんな視力弱者を気遣ってか、多くの展示品で拡大写真がセットになっていた。 中には虫眼鏡が設置してあるものまで。
解説によると、小さな粒を作ることも難しいが、それらを接合するのは更に難しいのだそうだ。 ローマに吸収されて以降、エトルリア人は衰退し、同時に彼らの金細工の技術も断絶。 その後いろんな人がエトルリア人の技術を再現しようとして叶わず、同等の物は19世紀になるまで作れなかったらしい。
紀元前4世紀のギリシャもなかなかのものだった。
こちらは金の線を使うのが特徴。 細い金線で作る立体レース編みのような細工が良い。 細かさや技術ではエトルリアには及ばないが、金でどんな形を作り出すかといったセンスはギリシャの方が上かもしれないな。 ギリシャの方がエトルリアよりも先に展示されていたのは、時代に沿って展示すると技術が後退したように見えるからだろうか。
後は、トラキア地方で偶然発見されたという、黒人の顔がびっしり同心円状に並ぶ金の円盤が良かった。 美術館内の説明には 「黒人の」 と書かれているのに、主催に名を連ねる東京新聞のサイトでは 「頭部の文様」 となっているのも、また違う意味で良い感じ。
最初から最後まで3周ぐらい見直し、ついでに常設展を見て帰ったら、さすがにちょっと疲れた。
最近よく見かける多機能トイレについて、産経新聞から。
車いすのまま入れるスペースや、乳幼児のおむつ交換シートなどを備えた「多機能トイレ」。 バリアフリーな社会を目指して設置が進んでいるが、“目的外使用”の可能性が指摘されている。 多機能トイレを利用したアダルトビデオ(AV)の存在から、カップルが室内で性行為を行っている疑いも否定しきれず、身体障害者団体がAVメーカー側に製作自粛を求める事態に発展している。 モラルの在り方が問われそうだ。
トイレから出てきたのはカップルだった
中部地方に住む女性(50)の夫は(46)10年前、交通事故のため脳損傷を負った。 高次脳機能障害と診断され、外出時は車いすを使う。 排泄や排尿の感覚にまひがあり、短時間に何度もトイレに行ってしまう。
しかし、身障者用のトイレがふさがっていることが珍しくない。 女性が特に疑問に思うのは、出てきたのが1人でないケースだ。
「中からカップルが出てきたのを最初に見たときは、目が点になった。 複数で入った人が、トイレ本来の目的のために使っているとは思えない。 ふさがっているときに扉をたたいたらシーンとしてしまい、物音が一切しなくなったこともある。 本当に困るからやめてほしい」
複数で出てくるのはカップルに限らない。 高校生らしい女の子ばかり3人とか、男性2人と女性1人だったこともある。
〜中略〜
障害者優先の「単機能トイレ」を
トイレは密室だ。
「健常者が多機能トイレで性行為をしていようと、着替えをしていようと、証明のしようがないのが実情だ。 たとえカップルが出てきたとしても、『介助が必要だったので2人で入っていた』と言われれば、何も言えない。 しかし、どうしても消化しきれない気持ちが残るのです」
要望書を公表したノワールの理事長で、自身も車いすを利用する熊篠慶彦さん(46)はそう話す。
また一部の多機能トイレでは、目的外の使用を防ぐため、30分間で自動的に施錠が解除されるものもある。 しかし、障害によっては用を足すのに30分以上かかる人もいる。
熊篠さんは「障害を持つ人にとって、利用できるのは多機能式トイレしかないことを理解してもらいたい」と話し、次のように続けた。
「多機能トイレでなくていい。 車いすなどで動きやすい空間に便器と手すりだけを備えた『単機能』のトイレを増やし、障害者が優先的に使えるよう整備してもらえないものだろうか」
どうしても消化しきれない気持ち
が残るのは何故だろう。
一見健常者に見えるような表面からでは判らない障害よりも、車椅子を使わなければいけない自分達の方がずっと苦労しているんだという思いが根っ子にあるからじゃないの? 他の人も苦労しているのかもしれないけど、それは自分と比べればきっと大したことはなくて、世界で一番不幸なのが自分だと。 それとも、優先席を専用席と思ってしまうタイプ?
なんてことを真っ先に思ってしまう性格の悪い俺。
しかし車椅子利用者が性善説で人を見てないっていうのも、ちょっと考えさせられるものがあるな。
と、ただ考えさせられて終わるのもどうかと思うので、俺が一つ解決策を教えてあげよう。
トイレ付車椅子
ただトイレが付いてるだけじゃなくて、腰から下を隠せるようなカバーがあって、さらにウォシュレットと消臭器と消音器もついたの。
消音器は、水の流れる音で誤魔化すようなものではなく、逆相の音を発して音自体を打ち消す真の消音。 ヘッドフォンで使われているノイズキャンセリングの応用。
トイレに溜まる汚物は、手を汚すことなく簡単に交換できるようにしておく。 こちらは掃除機のゴミ捨て機構の応用。
普通の車椅子よりは若干大きく重くはなるだろうが、今の技術でもそれなりにコンパクトに、何とか出来そうなものだが。 消音も100%は無理かもしれないが、80%ぐらいを抑えて小音に。
いや、考えてみれば、消音や水が必要なのは出す所と受ける所が離れているからなんだよな。 最初から管を差し込んでおけば、そんな機能は要らなくなるんじゃないだろうか。 これならぐっとコンパクトに出来る。 挿しっ放しは体に悪い気がするが、その辺りは素材と機構の工夫でなんとか解決できるだろう。
社会インフラのサポートとして、街のトイレには使用済み汚物パックを捨てるところと、交換用の汚物パックの自販機や、車椅子用のバッテリーの充電機を併設する。
実現できたら、車椅子利用者にとってはもはや世界がトイレ。 って、なんかあんまり嬉しく無い響きだけど、でも固定トイレからほぼ解放されるって、文明として一つ次のステージって感じだよな。
そうなると、トイレ付車椅子利用者が健常者に 「ちょっとトイレ貸してください」 なんて言われるようになったりするんだろうか。 まあ、なるんだろうな。 まずはイベント会場あたりから。
そうこうするうちにトイレ付き車椅子の快適さが周知されて、今日の多機能トイレと同様の事態になるのだ。
健常者が長距離ドライブ用や野外での特殊なプレイ用にトイレ付車椅子を買うせいで、本当に必要な障害者がなかなか買えない状態になっているとか。
街のトイレの汚物交換所がゴミでいっぱいになっていて、トイレ付き車椅子利用者が汚物を捨てられないとか。
そんなのがニュースになる日々。
そしてまた
どうしても消化しきれない気持ち
が残ったりするのだ。