代わり映えが無い。 お世辞にも美味いとは言えない。 そんな食堂の飯を、行列を作って食う。
「人工授精って、精子は他人のでいいけど、卵は母親のじゃなきゃ駄目なんだよな?」
「ああ、そんなこと言ってたな」
「じゃあ、男が自分と繋がった子供が欲しいときって、どうすんだ?」
「んー… 他所で作るとか?」
「他所がありゃいいけどね。 もてない男は淘汰されるシステムだよな」
「なんで人工授精なんだよ」
「それなんだけどさ。 この会社って、男でも育児休暇取れるだろ?」
「取った人はいないらしいけどね」
「俺が取ろうかと思ってさ」
「おまえ、育児がどれだけ大変だか判ってねーだろ」
「育児休暇を取ったからって、俺が育児をしなきゃいけないってことはないだろ」
「そうかぁ?」
「そうだよ。 それで、育児休暇が始まると同時に浮気して、1年後に離婚」
「離婚?」
「そう。 んで、すぐに浮気相手と結婚して、直後に子供が生まれて、また育児休暇」
「なんだよそれ」
「これを繰り返すと、ずーっと育児休暇だろ」
「それ、なんかすげー駄目人間って感じだぞ」
「まあ、そんなことを考えてて、そういえば人工授精って… と思ったんだよ」
「いざとなったら人工授精か」
「ブリーダーと呼んでくれ」
「むしろおまえが犬だろ」
「飼ってくれるんなら、なおいいんだけどな」
「またそれか」
またそれだ。