2016 05 05

フランスの風景

長期連休の最終日はいつも 「明日から仕事かぁ… しかし連休前は何をしてたんだっけ?」 なんて状況なのだが、昨日が仕事だったせいで今日は普通の休日感覚。 まあ何であれ休みではあることだし、東京都美術館に若冲を見に行こうと思ったのだが。

上野駅周辺は人が多いが、駅から離れるに従って人が減ってくるのがいつも。 しかし今日は東京都美術館に近付くにつれて人が多くなり、美術館の前はもう大変な人だかり。 何事かと思ったら、これが皆若冲を見に来た人たちの入場待ちの行列だった。 2時間待ちだそうだ。

5月とは思えない陽気の中で2時間なんて待ってられないし、仮に待ったとしても、この人ごみでは落ち着いて見るなんて無理だろう。 と、若冲はあっさり諦めたのだが、しかしせっかくここまで来たのだし、このまま帰るのももったいない。 ということで、なんとなく人が少なそうなイメージの新宿の東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館へ。 こちらは現在 フランスの風景 樹をめぐる物語 を開催中。

人が少なそうってのは少々失礼なイメージだが、実際に行ってみると予想以上に人が少なくて、おかげでゆっくりと見ることができた。

展示は、タイトルの通りでフランス各地の風景画。 時代は19世紀末から20世紀初頭。 場所も時代もそう広くない、というかむしろ狭いのに、絵の雰囲気は随分と変化していたな。

見た通りの風景を写実的に描くスタイルから始まり、印象派が現れ、それらが更に先鋭化したと思ったら、今度はその反動のように少し落ち着いた雰囲気に戻ってみたり。

しかし全体を通して思うのは、空が青くないってこと。

技法や絵の方向性は結構変化しているのに、どれも空が青くない。 夕暮れの景色はしょうがないが、いかにも昼間な絵でも、空はなんだか薄曇り。 抜けるような青さを感じさせるようなのはほとんど無い。

今回のテーマに沿って展示品を集めてきたからそうなったのかとも考えたが、これは多分逆だよな。 いくら産業革命後の工業の時代とはいえ、フランスの田舎なら空も青いだろう。 青空が当たり前だからこそ、絵に描くのは逆にそうじゃない空ってことだろうか。 いや、本当に空が青くなくて、それが印象的だったという可能性はないだろうか。 畑から巻き上げられる砂粒や、森から飛んでくる花粉で、都会では見られない空の色が印象的だったとか。

なんて、一度考え出すと暫くはそればっかりだったのだが、ふと 「抜けるような青い空って言うけど、青い空で抜けるって、何て言うか次元が違うよな」 なんて、いろいろ台無しになって終了。 青くないのは、俺の心の空かもしれない。

以下、印象に残った作品。

夏の風景 テオドール・ルソー

緑が印象的な作品。 今日の展示品の中で一番緑だったんじゃないだろうか。 日本なら7月ぐらいの緑かな。

空が最も青く感じるのもこれ。 描かれている空はほとんど雲で覆われているのだが、その上に青空があると想像してしまう。

ヴェトゥイユの河岸からの眺め、ラヴァクール(夕暮れの効果) クロード・モネ

モネの作品はどれも大きさの効果が強い。 絵葉書サイズだとなんとも思わないのだが、実際の作品を見るとちょっと良いなと思う。 これもそう。

この絵を描こうと思った日は、きっと綺麗な夕日だったのだろう。

オリーヴの並木路 アンリ・マティス

絵に描かれている景色よりも、絵の描き方が印象に残っている作品。 パッと見てマティスみたいだと思い、解説を見たらマティスだった。 こんな風にしか描けないのか、こんな風にしか描かないのか。

オンフルールの眺め、朝 フェリックス・ヴァロットン

風景画って、見ていて落ち着くものが多いのだが、これは逆で妙な不安を感じさせる。

一昨年だったか 裏側の視線 と題したヴァロットン展を見たが、これも裏側から見てみましたって雰囲気。 ちょっとキリコっぽくもある。

あと、常設コーナーに展示してあったゴッホの ひまわり も印象に残っている。 どっちかというと小さい作品なのだが、ぐっと迫ってくる感じだった。

美術館の窓から

美術館はビルの42階。 窓からの眺めは良い。 久しぶりに、エレベーターに乗ってて耳に来た。

高層ビル

周囲は高いビルばかり。 東北の震災で発生した長周期振動の参考動画に出てくるのも、この辺りのビル。

損保ジャパン日本興亜本社ビル

美術館のある損保ジャパン日本興亜本社ビル。 ちょっとカッコイイ。 ガンダムが発進しそう。