長期連休の最終日はいつも 「明日から仕事かぁ… しかし連休前は何をしてたんだっけ?」 なんて状況なのだが、昨日が仕事だったせいで今日は普通の休日感覚。 まあ何であれ休みではあることだし、東京都美術館に若冲を見に行こうと思ったのだが。
上野駅周辺は人が多いが、駅から離れるに従って人が減ってくるのがいつも。 しかし今日は東京都美術館に近付くにつれて人が多くなり、美術館の前はもう大変な人だかり。 何事かと思ったら、これが皆若冲を見に来た人たちの入場待ちの行列だった。 2時間待ちだそうだ。
5月とは思えない陽気の中で2時間なんて待ってられないし、仮に待ったとしても、この人ごみでは落ち着いて見るなんて無理だろう。 と、若冲はあっさり諦めたのだが、しかしせっかくここまで来たのだし、このまま帰るのももったいない。 ということで、なんとなく人が少なそうなイメージの新宿の東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館へ。 こちらは現在 フランスの風景 樹をめぐる物語 を開催中。
人が少なそうってのは少々失礼なイメージだが、実際に行ってみると予想以上に人が少なくて、おかげでゆっくりと見ることができた。
展示は、タイトルの通りでフランス各地の風景画。 時代は19世紀末から20世紀初頭。 場所も時代もそう広くない、というかむしろ狭いのに、絵の雰囲気は随分と変化していたな。
見た通りの風景を写実的に描くスタイルから始まり、印象派が現れ、それらが更に先鋭化したと思ったら、今度はその反動のように少し落ち着いた雰囲気に戻ってみたり。
しかし全体を通して思うのは、空が青くないってこと。
技法や絵の方向性は結構変化しているのに、どれも空が青くない。 夕暮れの景色はしょうがないが、いかにも昼間な絵でも、空はなんだか薄曇り。 抜けるような青さを感じさせるようなのはほとんど無い。
今回のテーマに沿って展示品を集めてきたからそうなったのかとも考えたが、これは多分逆だよな。 いくら産業革命後の工業の時代とはいえ、フランスの田舎なら空も青いだろう。 青空が当たり前だからこそ、絵に描くのは逆にそうじゃない空ってことだろうか。 いや、本当に空が青くなくて、それが印象的だったという可能性はないだろうか。 畑から巻き上げられる砂粒や、森から飛んでくる花粉で、都会では見られない空の色が印象的だったとか。
なんて、一度考え出すと暫くはそればっかりだったのだが、ふと 「抜けるような青い空って言うけど、青い空で抜けるって、何て言うか次元が違うよな」 なんて、いろいろ台無しになって終了。 青くないのは、俺の心の空かもしれない。
以下、印象に残った作品。
緑が印象的な作品。 今日の展示品の中で一番緑だったんじゃないだろうか。 日本なら7月ぐらいの緑かな。
空が最も青く感じるのもこれ。 描かれている空はほとんど雲で覆われているのだが、その上に青空があると想像してしまう。
モネの作品はどれも大きさの効果が強い。 絵葉書サイズだとなんとも思わないのだが、実際の作品を見るとちょっと良いなと思う。 これもそう。
この絵を描こうと思った日は、きっと綺麗な夕日だったのだろう。
絵に描かれている景色よりも、絵の描き方が印象に残っている作品。 パッと見てマティスみたいだと思い、解説を見たらマティスだった。 こんな風にしか描けないのか、こんな風にしか描かないのか。
風景画って、見ていて落ち着くものが多いのだが、これは逆で妙な不安を感じさせる。
一昨年だったか 裏側の視線 と題したヴァロットン展を見たが、これも裏側から見てみましたって雰囲気。 ちょっとキリコっぽくもある。
あと、常設コーナーに展示してあったゴッホの ひまわり も印象に残っている。 どっちかというと小さい作品なのだが、ぐっと迫ってくる感じだった。
美術館はビルの42階。 窓からの眺めは良い。 久しぶりに、エレベーターに乗ってて耳に来た。
周囲は高いビルばかり。 東北の震災で発生した長周期振動の参考動画に出てくるのも、この辺りのビル。
美術館のある損保ジャパン日本興亜本社ビル。 ちょっとカッコイイ。 ガンダムが発進しそう。