2017 09 05

花束はいつ供えられるのか

ダウン症の症状の一つである知的発育の遅れを、胎児段階でなら改善できる可能性が見えてきたらしい。 産経ニュースから。

ダウン症の子を妊娠したマウスに投与すると、生まれた子の脳の構造が変化して学習能力が向上する化合物を発見したと、京都大の萩原正敏教授(化学生物学)らのグループが、5日付の米科学アカデミー紀要電子版に発表した。 化合物の作用で神経細胞の増殖が促され、ダウン症の症状が改善されるという。

将来、出生前診断をした人の胎児を対象とした薬剤の開発につながる可能性がある。 ただ、人の胎児で臨床研究を行うことの是非など、早期の実現には倫理面で課題がある。

ダウン症は21番染色体が1本多い3本になることで起き、発達の遅れや、心臓疾患などの合併症を伴うこともある。 グループは、神経の元になる細胞(神経前駆細胞)が増えないことがダウン症の原因の一つと考え、717種類の化合物をふるい分けし、神経幹細胞が前駆細胞を増殖するのを促進する化合物を発見。 「アルジャーノン」と名付けた。

ダウン症の子を妊娠したマウスに1日1回、経口投与すると、胎児の前駆細胞が増えるなど、投与しなかったダウン症の子とは脳の構造が異なった。 迷路を使った実験で学習能力を比較した結果、投与したマウスの方が好成績で、正常なマウスとも変わらなかった。

グループは、ダウン症患者から作製した人工多能性幹細胞(iPS細胞)でも効果を確認。 脳神経が関係するアルツハイマー病や鬱病、パーキンソン病などにも役立てたいとしており、萩原教授は「すぐに臨床応用できるわけではなく、慎重に研究を進めたい」としている。

発見した物質にアルジャーノンと名前をつけるセンスは、どうなんだろうね。 あの小説の結末を知っていたら、そんな失敗を暗示するような名前にはしないと思うのだが。 知能が改善される話ということは知っているが、ちゃんと読んだことはなかったのか。 どう改善しても最終的には呆けてしまうんだし、違うのは時間だけだろ? なんて考えてはいないとおもうが。 あるいは本当に効果が一生に対して短くて、普通よりはるかに早く知能が減退するのだろうか。

まあそれはそれとして、気になるのは、ダウン症ではないマウスにも投与したのかってこと。 記事には無いが、きっとやってるんだろう。 というか、やらないはずが無い。 何であれ実験するなら必ず対照実験をやるはずだし。

アルジャーノン投与
ダウン症胎児 有り 無し
正常胎児 有り 無し

今回の場合なら、少なくともこんな組み合わせはやってみたことだろう。 なので正常胎児に対する効果に対して何も触れられていないことが逆に、ダウン症かどうかに関係なく知能増進に効果があったという結論になったんじゃないかと疑ってしまう。

ところで、しばらく前にどこかで見た記事だと、ダウン症の人にアンケートを取ったところ

という質問の回答が 「そう思う」 と 「ほぼそう思う」 で90%ぐらいになったのだそうだ。

その記事ではこの結果を好意的に解釈し、ダウン症は個性だとか、ちょっとサポートがあればみんな楽しくやっていけるなんてまとめてあった。 そうした発表をしたい人、記事を書きたい人からすると、アルジャーノンはダウン症らしく生きる権利を侵害する薬なのかもしれないな。

そうそう、確かそのちょっとしたサポートが、パン屋を作って働かせることだった。 俺にはよく判らないが、パン屋ってのは知的障害者向きなのかね。 なんか知的障害者の就労支援でよくパン屋が出てくる気がするのだが。