1999 05 06

一緒にするな

子供の頃に、トカゲに尻尾を切らせたことがある。

トカゲはいざとなると尻尾を切り離して逃げる。 切り離された尻尾は、しばらくはぴちぴち動いていて、敵がそっちに気を取られている隙に本体が逃げる。

ある日のこと、友達と遊んでいてトカゲを捕まえたとき、単なる知識でしかなかったそのことを、実際に試したのだった。

捕まえたトカゲを放す。 トカゲが逃げる。 尻尾を切り離さないで逃げる。 またすぐ捕まえて、放す。 尻尾を切り離さないで逃げる。 またすぐ捕まえて…これを何度も何度も繰り返した。 いい加減飽きて、 「本当は尻尾を切って逃げるなんて嘘なんじゃないか?」 と思い始めた頃に、突然尻尾が切れた。 尻尾は予想以上にのたうち跳ね回り、それに気を取られている間にトカゲはいなくなっていた。

残された尻尾の動きが鈍くなって、地面に血が付いているのに気がついた。 トカゲの血。 それでようやくトカゲが可哀相になった。 トカゲは確かに尻尾を切り離すことができたのだが、それはどうやら簡単なことではないらしかった。 死ぬよりはましな苦痛を選択したってことなのだろう。

ひたすら怠惰にだらけきった連休を過ごすと、仕事に出るのが、死ぬよりはましな苦痛を選択することであるように思えてくる。 仕事だけではない。 他でもいろんなところで、死ぬよりはましな苦痛を選択しているのだ。

そんな風に考えてしまうのは、すでに5月病だからだな。 やるきなしなしだらだらもういやいや。

トカゲさん、ごめんなさい。