1999 06 06

ちょっと怖い話の2

ブルーになっていたら、 「抱っこしてあげる」 と子供が抱きしめてくれた。

そんな、母親を慰めようとする子供の話に、自分のことを思う。

母が言うところでは、俺もそんなことをしていたらしい。 体調が悪かったりで暗い顔をしていると、子供だった俺がやってきて、肩に手をかけ、顔を覗き込んで、 「ママ、めんね、ママ、めんね」 と言っていたそうだ。 「めんね」 は 「ごめんね」 のつもり。 「何か自分が悪いことをして、それでお母さんが悲しがってると思うんだろうね。 一生懸命謝るんだけど、それが可愛くて」 との母の話を、そのときはそんなもんかと思って聴いていた。 どこの子供も、だいたい同じようなもんだろうと思っていた。

しかしこの頃では、この話を思い出すと、ちょっと複雑な気持ちになる。

母親を慰めたり元気づけたりしようと子供がかける言葉は、その子が実際に慰められたり元気づけられたりしたことに基づいているのだと思う。 抱っこされて慰められた子が 「抱っこしてあげる」 と言い、お菓子をもらって元気になった子が 「お菓子あげようか?」 と言う。

「ごめんね」 は、謝ることによって母の機嫌がよくなり、その様子に自分が安心したという経験を、何度も繰り返した結果として出てくるのだろう。 しかし、 「抱っこしてあげる」 でも 「お菓子あげようか?」 でもなく、 「ごめんね」 が真っ先に出てくるのは、どうなんだろうか。 親が暗い顔をするたびに罪を感じて謝る子供というのは、子供の頃の自分象としては、あんまり嬉しくないよ。