西の空、夕陽を遮る雲の形が、張子の虎のようだった。 西の空だけに、張子の白虎だろうか。 影なので色はさっぱり判らないんだけど。
脳梗塞だか脳内出血だかで倒れた人が奇跡的に回復したという話を聞いた。 しかし、知ってる範囲で同じような話を3件聞くと、これがどの程度の奇跡なのかが今一つピンと来ないな。 まあ、珍しい話だからこそ聞こえてくるのであって、奇跡が起きずにただ死んだとしか伝わらないケースが何十倍もあるのかもしれないんだけどさ。
奇跡が起きなかった場合を何と言うんだろう。 残念な当然?
「実は奇跡なんか起きてなくて、別人だったりしないのかな」
「いや、見た目は本人ですね。 別人って、宇宙人とかですか?」
「まあそんな感じの、一皮剝いたら正体不明の何かが」
「うーん… UFO作ってそうな雰囲気は無いですけどね」
「UFOか。 なんか、その辺り縛られている人って多いよね」
「え? どういうことですか?」
「だから、ほら、宇宙人は知的能力で地球人より遥かに上で、高度な技術力で宇宙船を作って地球に来てるとか」
「違うんですか?」
「鳥が空を飛べるからって、人間よりも知力技術力が上ってことは無いじゃん」
「それは、まあそうですね」
「それと同じだよ。 宇宙に飛び出せることと知能とは関係無い可能性が高いってこと。 地球で言うなら雀並みかもしれないからね。 むしろ宇宙怪獣なんて表現がぴったりな場合の方が多いんじゃない?」
「成る程。 宇宙雀みたいな感じですか」
「そうそう、そんな感じ。 スペースチュンチュン。 まあでも、その発想もまだ縛られたものなんだけどね。 有機物ベースとか」
「確かに、炭素じゃなくて硅素でもいけそうですよね」
「もっと言うと、宇宙なんだからプラズマベースとかあっても良さそうだろ? プラズマ振動が生命活動とか意思を生み出すとか」
「あ、それは確かに考えられますね。 成る程。 というか、考えてみるとそっちの方がありそうですね」
「そう。 それがプラズマン」
「え? 何か凄くいい着眼点の話が進んでいたような気がするんですけど、そんなオチですか?」
そんなオチで悪かったな。
しかし、この辺り当然と言えば当然だが、SFの世界ではバリエーション豊かで、むしろ出尽くした感がある。 俺の中で印象深いのは、空間を縮める能力を持った種族を狩って奴隷とし宇宙船の動力に使う、中世のガレー船の宇宙版という感じのもの。 ストーリーはすっかり忘れたが、この宇宙航行のシステムだけは覚えている。 あれは何で出てきたんだろう。
そう言えば、もう随分とSFを読んでないな。