「これが最後だから、みんな、行けるとこまで行くよ!」
そう言って、女の子が古いラジカセのスイッチを入れた。 流れてきたのは、三味線をバックに歌う声。 ♪ソーランソーラン…
音楽に合わせて踊る、こいつらは中学生だろうか。 先の女の子が、再び声をあげた。
「もうすぐ電池がなくなるから、みんな頑張って!」
電池かよ。
浅川の土手に咲いていた白い花。 花韮というらしい。
すっかり緑が濃くなった浅川の土手に、一輪だけぽつんと咲いていた黄色い水仙。 風に乗って届くかすかな風鈴の音が、まるでこの花が鳴っているように聞こえた。