それは月のように

仕事帰りに見上げる空に、兎のような蟹のような雲。
同じものを見て兎と思うか蟹と思うかって、月の模様みたいだよな。 日本では餅を搗く兎。 中国では薬を挽く兎。 遠く南欧では鋏を振り上げる蟹。
いつだったか、妹と話したことを思い出した。
「月の模様って、餅を搗く兎って言うでしょ?」
「言うね」
「あれ、どこが臼でどこが杵なの? 全然餅を搗いてるように見えないんだけど」
「じゃあ何に見えるの?」
「餅を搗かない兎」
まあ、それもあり。 兎に見えるならいいだろう。 日本人として。