1999 11 10

せめて夢の中だけでも幸せを

そんなにファンって程でもないと思っていたのだが、本当は大好きなのかもしれない。 と言うのは、松嶋菜々子さんのこと。 また彼女の夢を見た。 夢の世界では、俺は彼女と一緒に暮らしているらしい。 いい気なもんだ。

ベランダの手すりに布団を干して、そのまま布団にもたれて外を見ていた。 横の洗濯機がピーピー鳴って、彼女もベランダに出てきた。

「いい天気ね」

そう言って、洗濯物を干し始めた。 シャツをパシッとやったりしながら、手際よくぱっぱっと干していく。 前屈みになったり背伸びしたりするのに、胸元が大きく開いたシャツにスリットの入ったミニスカートなので、見えそうで見えなくて、ちょっとドキドキする。

「じーっと見ないでよ」

「いいじゃん、減るもんじゃないんだから」

「なんか減りそうなのよ。 パンツが見たいんなら、はい」

干そうとしていたパンツを、広げて見せる。

「そんな風に見せられても、ちっとも嬉しくないんだけどな」

「あら、全然嬉しくない?」

「いや、その、ちょっと嬉しいかな。 でも、どっちかって言うと」

「それは駄目」

「……」

相変わらず、鋭く厳しい。

「3階だと、下着泥棒なんかを気にせずに干せるからいいのよね」

「下着泥棒ってのは、俺には判らん世界だな。 盗んだ下着で何をするんだろうね」

「やっぱりかぶって見るんじゃない。 かぶってみる?」

干そうとしていたパンツをもう一つ、広げて見せる。 だから、そーゆー趣味はないってのに。

「あ、そうそう、ちょっと待って」

シャツの中に手を回して、器用に体をくねらせたと思うと、胸元からブラジャーを取り出した。

「ブラって、かぶると可愛いんだよ。 ほら」

そう言って、自分の頭にブラをかぶってみせる。 うう、確かに可愛い。

「菜々子スペシャルを見せてあげるから、ちょっとあっち向いてて」

もう十分可愛いところに、更にスペシャル。 スペシャルって何だろう? 素直に後ろを向いて、ドキドキワクワクする。

「はい、こっち向いて。 どう?」

振り返ると、さっきのブラの上からパンツをかぶっていた。 可愛い。 呆れるほど可愛い。 ってゆーか、呆れる。

「何をしてるですか」

「あら? 可愛くない?」

「いや、可愛いけど」

「けど?」

「意外とブラが小さい」

「何それ? せっかくいいこと教えてあげようと思ったのに、もう教えてあげない」

「いいことって何?」

「ごめんなさいは?」

「ごめんなさい。 小さいかもしれないけど、そのぐらいが好みです」

「…何かすっきりしないけど、まあ許してあげる」

「いいことって何?」

「あのねぇ」

「うん」

「私、今、ノーブラのノーパンよ」

「あっ!」

脱いでかぶってるんだから、そりゃ当たり前なのだが、なかなか刺激的な当たり前だ。 そうか、今はノーブラでノーパンなのか。 そうかそうか。

「あー、目が本気になってるぅ」

本気にもなろうというものだ。 眠れる獅子が目覚めたと理解してもらおう。 さて、どうしてくれようか。 さて…

そこで目が覚めた。 とたんに、目覚ましが鳴りだした。 いや、目覚ましが鳴ったので目が覚めたのかもしれない。 だとしたら、なんてもったいないことをしたんだろう。 もうちょっと遅くセットしとけばよかった。

テレビをつけたら、朝のニュースは下着泥棒。 盗んだ下着が3万点だそうだ。 予知夢だったのか。