そんなにファンって程でもないと思っていたのだが、本当は大好きなのかもしれない。 と言うのは、松嶋菜々子さんのこと。 また彼女の夢を見た。 夢の世界では、俺は彼女と一緒に暮らしているらしい。 いい気なもんだ。
ベランダの手すりに布団を干して、そのまま布団にもたれて外を見ていた。 横の洗濯機がピーピー鳴って、彼女もベランダに出てきた。
「いい天気ね」
そう言って、洗濯物を干し始めた。 シャツをパシッとやったりしながら、手際よくぱっぱっと干していく。 前屈みになったり背伸びしたりするのに、胸元が大きく開いたシャツにスリットの入ったミニスカートなので、見えそうで見えなくて、ちょっとドキドキする。
「じーっと見ないでよ」
「いいじゃん、減るもんじゃないんだから」
「なんか減りそうなのよ。 パンツが見たいんなら、はい」
干そうとしていたパンツを、広げて見せる。
「そんな風に見せられても、ちっとも嬉しくないんだけどな」
「あら、全然嬉しくない?」
「いや、その、ちょっと嬉しいかな。 でも、どっちかって言うと」
「それは駄目」
「……」
相変わらず、鋭く厳しい。
「3階だと、下着泥棒なんかを気にせずに干せるからいいのよね」
「下着泥棒ってのは、俺には判らん世界だな。 盗んだ下着で何をするんだろうね」
「やっぱりかぶって見るんじゃない。 かぶってみる?」
干そうとしていたパンツをもう一つ、広げて見せる。 だから、そーゆー趣味はないってのに。
「あ、そうそう、ちょっと待って」
シャツの中に手を回して、器用に体をくねらせたと思うと、胸元からブラジャーを取り出した。
「ブラって、かぶると可愛いんだよ。 ほら」
そう言って、自分の頭にブラをかぶってみせる。 うう、確かに可愛い。
「菜々子スペシャルを見せてあげるから、ちょっとあっち向いてて」
もう十分可愛いところに、更にスペシャル。 スペシャルって何だろう? 素直に後ろを向いて、ドキドキワクワクする。
「はい、こっち向いて。 どう?」
振り返ると、さっきのブラの上からパンツをかぶっていた。 可愛い。 呆れるほど可愛い。 ってゆーか、呆れる。
「何をしてるですか」
「あら? 可愛くない?」
「いや、可愛いけど」
「けど?」
「意外とブラが小さい」
「何それ? せっかくいいこと教えてあげようと思ったのに、もう教えてあげない」
「いいことって何?」
「ごめんなさいは?」
「ごめんなさい。 小さいかもしれないけど、そのぐらいが好みです」
「…何かすっきりしないけど、まあ許してあげる」
「いいことって何?」
「あのねぇ」
「うん」
「私、今、ノーブラのノーパンよ」
「あっ!」
脱いでかぶってるんだから、そりゃ当たり前なのだが、なかなか刺激的な当たり前だ。 そうか、今はノーブラでノーパンなのか。 そうかそうか。
「あー、目が本気になってるぅ」
本気にもなろうというものだ。 眠れる獅子が目覚めたと理解してもらおう。 さて、どうしてくれようか。 さて…
そこで目が覚めた。 とたんに、目覚ましが鳴りだした。 いや、目覚ましが鳴ったので目が覚めたのかもしれない。 だとしたら、なんてもったいないことをしたんだろう。 もうちょっと遅くセットしとけばよかった。
テレビをつけたら、朝のニュースは下着泥棒。 盗んだ下着が3万点だそうだ。 予知夢だったのか。