可能性は0ではない。
薔薇色の妄想につっこまれて、そんなセリフを返すCMがあった。 野菜ジュースだったかな。
障害者施設から抜け出し、無賃乗車の果てに山で死んだ知的障害者が、もしも障害者施設からの脱出に失敗していた場合。 その後に人並みに稼ぐようになる可能性が、一体どれだけあるのかね。 可能性は0ではないんだろうけどさ。 NHKニュースから。
重い知的障害のある少年が入所先の施設を出て死亡した事故の賠償をめぐり、少年の両親が 「将来働いて得たと予想される『逸失利益』を施設側がゼロとしたのは障害者差別だ」 として、国内の平均賃金を基準に逸失利益を認めるよう求める訴えを、近く東京地方裁判所に起こす方針を決めました。 弁護団は障害の有無で逸失利益が決まることが妥当かどうか、問いたいとしています。
東京都内の障害者施設に入所していた松澤和真さん(当時15)は、おととし9月、鍵が開いていた扉から外に出て行方がわからなくなり、2か月後に山の中で遺体で見つかりました。
施設側は賠償交渉の中で、安全管理の過失を認め慰謝料として2000万円を示しましたが、和真さんが将来働いて得たと予想される 「逸失利益」 についてはゼロとしたということです。 両親は 「将来、社会に貢献する大きな可能性を秘めていた。 障害者の命の価値を低くみた差別だ」 として、国内の平均賃金を基準におよそ5000万円の逸失利益を含む賠償を施設側に求める訴えを、近く東京地方裁判所に起こす方針を決めました。
重い知的障害のある人の逸失利益をめぐっては、 「徐々に働く能力を高めることができた可能性があった」 などとして、8年前に青森で、5年前には名古屋の裁判所で、それぞれ一定額を認める判決や和解がありました。 しかし、原告が求めた平均賃金を基準にした算定ではなく、弁護団は 「障害があるかないかで命の価値とも言える逸失利益をゼロにしたり、少なくしたりすることが妥当かどうか、司法に問いたい」 と話しています。
これに対し施設側は 「訴状を見ていないので具体的なコメントは控えたい。 裁判の中で主張したい」 と話しています。
父親 「命の価値を差別しない判断を」
父親の松澤正美さんによりますと、亡くなった和真さんは3歳のとき、自閉症と診断されました。 和真さんは単語を話して好きなものを言えたほか、何をしたいのか意思を表すことはでき、人の話を聞いて理解していたということです。 特別支援学校の中等部になると落ち着きのない行動が見られ、両親は医師の勧めもあって複数の職員がいる施設への入所を決めたということです。
松澤さんは 「息子は成長過程で多くの可能性があった。 司法は命の価値を差別しないような判断をしてほしい」 と話しています。
逸失利益で司法判断分かれる
まだ働いていない重い知的障害のある人が死亡した場合の逸失利益をめぐっては、これまでも裁判で争われてきました。
大分県で特別支援学校の男子児童が死亡した事故では平成16年、大分地方裁判所が 「医療技術の進歩を考慮しても児童が将来、働けるようになる可能性を認めるのは難しい」 として、県が逸失利益を支払う必要はないとする判断を示しました。
これに対し、16歳の少年が施設で死亡した事故で、青森地方裁判所は平成21年、 「健常者と同じ程度ではなくても、徐々に働く能力を高めることができた可能性があった」 として、県の最低賃金をもとに600万円余りの逸失利益を認めました。
さらに、名古屋市で15歳の少年が施設の階段から転落して死亡した事故では、平成24年に名古屋地方裁判所で、将来働けた可能性を認めたうえで、障害年金の受給額を基準に逸失利益を770万円余りとする和解が成立しました。
死者に鞭打つつもりはないが、この手の話って、損害を与える可能性が考慮されないんだよな。 生きていることで発生したであろう周囲の負担についても。
例えば障害者施設利用の自己負担。 施設利用の自己負担分がどの程度なのか、適当にググってでてきたところは月に8万ぐらいだった。 これまでの様子や同様の人の状況から判断すると、これぐらいの金額を親がずっと払い続ける可能性の方が高いだろう。
提示賠償額の2000万と要求の5000万の差3000万がそのまま逸失利益だとして、諸々単純化して考えてみる。
とすると、子供が生きていた場合、親にとっては1460万の支出が期待値となる。 想定される支出の減少も利益といっていいなら、子供の死は1460万の期待利益。
ああ、いや、計算は良いとしても仮定が違うか。 稼ぐのは子供で、当然本人の生活だってそこから賄う必要があるから、収入全額が親に行くはずがないんだよな。 裁判で要求された逸失利益3000万が子供の稼ぎから親が得ることができる金額だとすると、平均の年収が300万じゃ全然足りなそう。 一体どれだけ稼がせるつもりだったのか。
ちなみに損益分岐点となるのは、3000万を稼ぎ出す確率を37.5%とした場合。 これより大きな確率でないと、親にとっては期待値が収入にならない。 やっぱり無理な気が…。
社会への損害は、どうだろうね。 少なくとも施設から抜け出した後は無賃乗車を繰り返している訳だし、生きていた場合、何かやらかして損害賠償なんて可能性もそれなりにあるだろう。 そんな時は過去の病歴から責任能力無しとなることが前提だから、費用の発生も無しということなのかな。
ところで弁護団は
命の価値とも言える逸失利益
なんて言ってるらしいが、その言葉通りに逸失利益が命の価値と言っていいなら、実際に生きて利益を生み出さなかった命の価値はどうなんだろうね。
仮に今回の裁判で逸失利益3000万が命の価値として認められたとして、その後、何かの事件で弁護士が殺されたとしよう。 その逸失利益が、命の価値に上下はないから今回と同じ3000万とされたら、弁護士連中が真っ先に文句を言いそうだな。 弁護士という職業に対する逸失利益(つまり命の価値)算定を、あんなのと一緒にするなって。
日の出前の東の空。 グラデーションが綺麗だった。
西の空に月。 低い位置で空気の揺らぎの影響を受けたのか、輪郭がちょっと歪でルナティック。
沈む月。
ほんの数分で沈みきってしまった。 世界は実は結構な速さで動いてるんだよな。