2018 02 11

滲み出す混濁の紋章

夕日

近所のマンションが大規模修繕中。 逢魔が刻の現場は、アニメや漫画なら一番高い柱の上に魔法少女が立っていたりするのだが、現実は鳶すらいない。

建設現場の足場の向こうにある夕日が足場の骨組みを消してしまうのは、夕日が点光源ではなく広がりを持っているから。 太陽の視直径が確か0.54度だったので、太さ10cmの柱はだいたい10m以上離れると太陽光による影がなくなるのだ。 厳密に言うと無くなる訳じゃなくて、半影がもう半影と認識できなくなる薄さになってしまうからなのだが、まあ体感的には無いでいいだろう。

そういえば、二つの影が近付いたときに影同士の最も接近しているところにコブができて影の元よりも影の方が先にひっついてしまうのも、光源が幅を持っているからなんだよな。 光源が幅を持つことで半影ができる。 影同士が接近すると互いの半影が先に重なり、そのために他より少し濃い影ができる。 これが影のコブの発生理由。

子供の頃にこの現象の説明を聞いても今一つ納得できなかったのが、学生の頃にメタボールのサンプルを見て 「あ、こういうことか!」 と凄く納得したのを覚えている。 余談だが、当時はようやくメタボールがパソコンでもなんとか扱えるようになりつつあった状況で、パソコンにも財布にもシャレにならない高負荷だった。

さて、当時は凄く納得したのだが、今改めて考えてみると、一定の濃度を超えた場合に表示するというメタボールのレンダリングは、レンダリングするかどうかの閾値を持たない自然現象とはやっぱり違うんじゃないかって気がしてきた。 いや、人が弄れないだけで、認識あるいは意識できる境界としての閾値はあるのかな。 でもそんなレベルなら、やっぱりメタボールとはちょっと違うような…。

なんか気になったので試してみた。

まずは半影有りの影。

そして半影無しの影。

どちらも右側の影をクリックすると、じわっと近付いて引っ付いて元の位置に戻る。 ちなみに半影は、透明度を適当に設定した直径の異なる円を同心円状に重ねることで表現している。

で、試してみた結果だが、思った程コブができない。

半影有り版は、接近する影の間に薄っすらと濃い部分ができはするが、影本体はむしろ反発しているようにも見える。 波が引いてから寄せるような、一旦反発してからぐっと溶け合う感じ。 ツンデレ?

逆に半影無し版の方が、アンチエイリアスのレンダリングの影響か、極近距離まで接近したところで濃いコブが伸びるように見える。

半影の表現が拙いのだろうか。 まあアンチエイリアスも半影みたいなものなので、これはこれで検証になっているとも言えるのだが…。 回折による影響も考慮しないとダメなのだろうか。

とりあえずの半影じゃなくて、もっと実際に近いところまで濃さや広がりを調整してみるか。 太陽の視直径。 影を作る物の大きさ。 影を投影する面までの距離。 主要なパラメーターはこのぐらいだから、大して難しくもないし。

と思ったが、その前にまず手軽に極端な広がりを実現してみようと、眼鏡を外してみた。

このところ疲れが溜まっているのもあって、いい感じにぼやけて見える。 なんかもう接近する前から二つの影の中央に薄っすら怪しい影が見えてるし。 そして二つを近付けると、影はその間から湧き上がってくるかのように濃くなって、記憶の中のメタボールと同じ繋がり方になった。 半影有りも無しもだいたい同じ結果。

ということで若干の修正。

Q.接近する影同士の間に影のコブができるのはなぜか。

A.目が悪いから。

ほぼこれ。 その他、半影や回折が誤差程度に影響していると思われる。