多摩森林科学園
久しぶりに多摩森林科学園に行ってみた。 染井吉野はもうすっかり散ってしまったのだが、ここの桜保護林には種類の違う桜がたくさんあって、その開花時期の違いで結構長く花が見られるのだ。 桜はもちろんだが、足下に色々花が咲いているのもいい感じ。

叡山菫(エイザンスミレ)
家に帰ってから読むために写真に撮っておいた説明書きには
明るい林内や林縁に多いスミレ。 葉が深く切れ込んでいる。 夏にでる葉は春の葉より大きく、切れ込みが少なく、幅が広くなり、別の植物のように見える。 葉の性質も、弱い光を効率よく利用するように変わる。
とあったのだが、花ばかり見ていて葉はまるで見なかったので、葉に切れ込みがあったかどうかが思い出せない。

葉に注意がいかなかったのは、菫の後頭部(?)の形が気になったせいでもある。 これまで正面からばかり見ていたのだが、後ろはこんな風になってるんだね。 ちょっと予想外の形だった。
比叡山に生えている菫ってことで叡山菫らしいのだが、今はどこにでも生えてるんだよな。

蛇苺(ヘビイチゴ)
なんだかプラモデルっぽい。 いや、歴史に現れた順を考えると、プラモデルの質感が蛇苺っぽいというべきなのか。

この辺りの桜は、満開を少し過ぎたぐらい。 何分咲きみたいな言い方をするなら、三分散りってところか。
桜とは関係無いけど、三分咲きなんて言うのは10分が100%だからだよな。 体温が36.5度なのを36度5分なんて言うのもそう。 分は小数第1位の意味。 同じく小数第1位を表すのに割があるが、三割先きとは言わないし、36度5割とも言わない。
この割だけど、江戸時代、金融関係で利息を表すのに導入された単位だそうだ。 で、割の小数第1位にも、2割5分なんて他の単位同様に分が使われたのだが、割自体が小数第1位を意味していたものだから、この流れだと分は実質小数第2位になってしまう。 これが今日の割と分の混乱に繋がっているのだそうだ。 いや、混乱と言っても、大抵の人は何も気にしないで使ってるんだろうけどさ。
以前、割と分の関係が気になってちょっと調べたことがあるのだが、その時は、昔は分で江戸時代に割が使われ始めたというところまでで 「新しく割ができたから分から下がスライドしたのか」 と先走って終わってしまっていたのだが、実際は何も変わってなくて 分はその前にある単位の小数第1位を表す という定義は今もそのままなのだ。
割と同じ分野の単位のパーセントも、例えば72.46%を72パーセント4分6厘なんて言ってれば、今更こんなことを考えなくて済んだかもしれないな。
ところで、大きい方の単位が万から先は4桁毎なのに対して、小数以下の単位が1桁毎になっているのは、小さい方がイメージし難いからだろうか。 Wikipediaによると、塵劫記に定義されている小さい方の単位は以下の通り。
単位 | 読み | 備考 |
---|---|---|
分 | ぶ | |
厘 | りん | |
毛 | もう | け。 |
糸 | し | いと。 |
忽 | こつ | たちまち。 |
微 | び | わずかな。 |
繊 | せん | 繊維。 |
沙 | しゃ | 水辺の砂。 |
塵 | じん | ちり。 |
埃 | あい | ほこり。 |
渺 | びょう | かすんでいること。 |
漠 | ばく | ぼんやりしていること。 |
模糊 | もこ | あいまいなこと。 「模湖」 とも書く。 |
逡巡 | しゅんじゅん | 決断がつかないこと。 |
須臾 | しゅゆ | しばらくの間。 |
瞬息 | しゅんそく | まばたきをし、息をする間。 |
弾指 | だんし | 指の爪の先を親指の腹にあてて、音を立てること。 |
刹那 | せつな | 短い時間。 |
六徳 | りっとく | 知・仁・聖・義・忠・和。または、礼・仁・信・義・勇・知。 |
虚空 | こくう | 一切が存在する空間。 |
清浄 | せいじょう | 煩悩や悪行が無く、心身が清らかであること。 |
糸とか塵とかは判り易い。 空中にあるのは判るけど一粒の判別がつかないほど細かくなっている状態と考えれば、漠や模糊も判る。
弾指や刹那は視点が変わって、広がりとしての大きさ(小ささ)ではなく時間間隔の長さ(短さ)になっているが、これもまあ判る。
六徳はどうなんだろう。 これらの徳を全て備えた人がどれだけるだろうか? いや、いない。 といった小ささということだろうか。 比率としての小ささ。 まあ、分母となる人間の数を考えると、過去も含めた当時の人口を少々多く見積もっても埃か渺ぐらいのオーダーじゃないかと思うが、これに宗教的な絶望感が加味されることで小ささがより強く表現されるのだと考えれば、判らなくもない。 その先も同様。
だが逡巡、お前は駄目だ。 決断がつかないことが何故短い方の単位なのか。 どう考えても長い方なのだが、これまた宗教的な何かがあるのかな。
あと、大きい方の単位に、恒河(ガンジス川)の砂粒の数を意味する恒河沙があって、この大きさが逆に砂粒の小ささを想像させるのだが、 その通りに小さい方に沙があるのがちょっと面白い。

白花蛇苺(シロバナヘビイチゴ)だと思う。
最初は、桜の花が丸ごと枝から落ちたと思った。 でも枝から落ちたにしてはしっかりしていておかしいと思い、確かめてみたら地面からちゃんと生えて咲いていたのだった。 で、帰ってから調べようと写真を撮っていたら、通りすがりのおばさんに話しかけられた。
「あら、花がそのまま落ちたのかと思ったんですけど、そこから生えてるんですね」
「そうなんですよ。 やっぱり最初は落ちたものだと思いますよね、桜に似てるし」
「桜じゃないんですか?」
「違うと思いますよ」
「じゃあ、なんでしょう。 白花山吹?」
「いや、山吹でもないんじゃないですかね」
おばさん、なんでしょうねーなんて、何だか楽しそうに去って行った。

日本蜜蜂の巣がありますのマーク。