1999 05 12

もう早起きなんかしない

ずいぶん早く目が覚めたので、米を炊いてみた。 でもおかずが何も無くて、ご飯にふりかけのみという朝食だった。

「今日もどっか行くの?」

「浜松町。 かったりーよ」

「最近おやじが口内炎が凄くてさあ。 もう喋ることもできなくなってんだよ」

「ふーん」

「それで病院に行ったら、黴が生えてんだって。 口の中に黴」

「水虫みたいなもんか」

「そう。 湿気も栄養も豊富だからね。 あーゆーのって、どうやって直すんだ?」

「やっぱ薬なんじゃない。 あとは熱湯を飲み込んでみるとか」

「死んじゃうよ」

「凍らせて細胞膜を破壊するとか」

「死んじゃうよ」

「部品が交換できればいいんだよな。 調子悪いところだけ新しいのにさ」

「そのうちそうなるのかね」

「なると思うよ。 お茶の水辺りにパーツショップなんかできてさ」

「そんなお手軽に売るの?」

「そう。 で、本当にそうなったら、俺は全身取り替えて藤原紀香になる」

「お前がなるのかよ」

「おう。 脳が渡邊博之で、他はぜんぶ藤原紀香」

「自分がなって何すんだよ。 まぁすることはいろいろあるんだろうけど」

「いろいろね。 あ、でもそれって性同一性障害って言うのかな」

「どうだろう。 性同一性障害ってのも、よく判んない障害だよな」

昼飯食いながらそんな話をして、1時過ぎに出掛けた。 浜松町に着いたら、そこの部長がいない。 急な用事で富士に出張ということだった。 結局、わざわざ他から浜松町にきた人だけで打ち合わせ。

コンビニでおにぎりと缶チューハイを買って、家に帰って気がついた。 朝、米炊いてたんだった。

もう何もかもが無駄。