会社の帰り、聖蹟桜ヶ丘で電車を下りた。 ちょっと見てみたい本があったからだ。
その帰り。
改札を抜けて下りホームのエスカレータに向かう途中、ふと顔を上げると、制服姿の女の子が柱にもたれて立っていた。 中学生ぐらいだろうか。 その子が、両手を広げて差し伸べたところに、女の子が駆け寄ってきて抱きついた。 似たような年恰好の女の子。 抱きついて泣いている。 先の女の子は、その子を抱いて背中をさすり、髪に顔を埋めるようにしていた。 なんなんだ? と、疑問に思いながらも、だから何をするでもなく、その子たちのそばを通り抜ける。 何となく視線を感じて振り返ると、抱きついて泣いている子の髪に顔を埋めるようにしている子が、顔はそのままにこちらを見ていた。 目が合って、その子がにっと笑った。 その笑顔に、何故か俺はぞっとした。