もう随分昔のことだが、何とかウテナというタイトルのアニメがあった。 絵柄から、少女漫画が原作ではないかと思うのだが、詳しいことは知らない。 休暇を取った日の夕方にテレビをつけたらやっていた、というパターンで数回見ただけだし。
たったそれだけなのに今も覚えているのは、初めて見たときのシーンがとても印象的だったから。
その日、何をしていたんだったかは忘れたが、何かをしながら、何となくテレビをつけた。 その瞬間、 「世界を革命する力を!」 と、予想外の絶叫。 慌ててアンプのボリュームを落としながら画面を見ると、そこには横たわる黒人の少女。 その少女の胸元から剣が現れる。 胸元からといっても、バニーガールが胸の谷間からライターを出すのとは違う。 その場で精製されるように、光の中から細身の剣が伸びてくるのだ。 その剣を取って戦いに臨む、ベルサイユのバラ風美少女の主人公。
そうして決闘が始まるのだが、派手に登場した割に、剣はただの剣。 手にして直接切る以外に、これといった特殊能力・装備は無いらしい。 さっき、 「世界を革命する力」 って言ってたけど、それがこのただの剣なのか? 当たり前のように核兵器があるこの時代、レーザーでミサイルを撃ち落そうというこの時代に、剣で世界を革命できるのか? 何か間違ってないか?
いや、間違っているのは俺か。 世界を革命する力は、剣じゃなくて、剣を生み出す能力の方だろう。 「世界を革命する力としての剣をください」 ではなくて、 「世界を革命するその力で、今日は剣を作ってください」 と言っているのだな。 胸から何かを、ひょっとすると何でも、生み出す力であれば、それは確かに世界を革命する。 今、その力で生み出したものが剣なのは、剣で戦うというルールだからか。 普段はもっと違うものを出したりするんだろうな。 もっと違うものって…
いやいや、剣は剣で革命かもしれない。 弱い人、例えば苛められっ子にとって、人を殺せる武器を手にするってことは、とても大きな変化を心にもたらすだろう。 ナイフをポケットに入れておくだけで、ちょっと気が強くなるらしいし。 この場合、変化は自分の心の中に起きるんだけど、その心こそが外部世界を捉えるもの。 自分の心に革命を起こせるなら、それは世界を革命する力と言っていいかもしれないな。
なんて、最後は怪しいセミナーみたいなことを考えたりしたんだよな。
そんなことを、帰りの電車の中で突然思い出した。 何で思い出したのかは判らない。 何か、思い出すきっかけになるようなものがあったのかもしれないな。 例えば、DVDボックス発売のポスターが貼ってあったとか。 ま、思い出したからどうってことも無いのだが。
そうそう、黒川紀章が死んだらしい。 彼は建築の世界で革命を志したんだろうか。 革命を成した気でいたんだろうか。 政治の世界の革命には失敗したようだが。
鉄塔が好きだ。
そんな俺の不満は、大きく二つ。 一つは、鉄塔に登れないこと。 もう一つは、鉄塔の真下に行けないこと。
登れないのはしょうがない。 が、だからこそ、せめて真下から見上げたいと思うのだが、殆どの鉄塔ではそれすらも不可。 たいていは張り巡らしてある柵の外から見上げるしかない。 地方に出張に行ったとき、電車の窓から見かける田んぼの中の鉄塔などはむき出しなのだが、だからと言っておいそれと出かけられる場所でも無いし。
そんな日々とも、今日でさようなら。 ついに見つけたよ、真下に入れる鉄塔を。