父がデイサービスで通う介護施設では、リハビリを兼ねて籐細工をやっている。 希望者による不定期開催で、ちょっとづつ籠なんかを作っているらしい。
ある日、その作業を見て、父が興味を示したらしい。 「材料費がちょっとかかりますがどうですか?」 と連絡があって、きっと好きだからやらせてくれと答えたのが、確かもう数年前。
その後しばらくして最初の作品が出来上がり、施設から持って帰ったのを見て驚いた。 予想外によくできている。 さすがに売り物と比べると精度も強度も落ちるが、悪く無い。 きっと子供の頃に家の手伝いで作ったりしてたのだろう。
またしばらくして施設から連絡があった。
「次の籐細工を作ってるんですけど、凄く手が早くて、あっという間に完成しそうなんですよ」
「そういうの得意ですからね。 細かいことを気にしないのもあって、無駄に早いんですよね」
「それで、私たちもちょっと困ってるんです。 このペースで仕上げていくと家の中が籠だらけになりそうで」
「あー、それは確かに困りますね」
「でもせっかく楽しそうなのを止めるのも… どうしましょうか」
「じゃあ、とりあえず難易度を上げてもらえますか? 飾りを入れるとか、高度な技法を使ってみるとか」
「わかりました。 じゃあ、ちょっと難しいのに挑戦してもらいます」
そんなやり取りの後は特に何も言ってこないので、きっと難易度を上げることでペースも落ち着いたんだろう。 その後3作品を仕上げて持って帰っているが、一部の編み方を変えていたり、縁に飾りがついたり、確かにだんだん高度になっている。
そのうちの一つが結構良い出来だったので、今日、妹のところに持って行った。
「え? これ、お父さんが作ったの?」
と、母も妹も異口同音。 まあ、そう言うよな。
何でも手作りするが実用性重視、というか実用性しか重視しないのが父。 そんな父が、見た目も割と良い感じのものを作るなんて!
もちろん褒めている。