2016 07 19

バスに乗って、長椅子タイプの席に座って、なんとなく視線を上げたら Apple Watch を着けた腕があった。 店頭で見たことはあるが、実際に着けているのを見たのは今日が初めてだ。 発売されてからもう随分経つのだが。

お笑い芸人は、街中で見つかるとよく 「何かギャグをやってくれ」 と言われるそうだ。 そんな話を 「金を払わずにギャグだけ見せろとか、結構図々しい人も多いんだなぁ」 なんて思っていたのだが、今日 Apple Watch を見て、お笑い芸人にギャグを求めてしまう人たちの気持ちがちょっと判った気がした。

省電力中の真っ黒な画面に 「せっかくそんなものを着けてるんだから、芸の一つも見せろよ」 なんて思ってしまうのは、多分そーゆーことだよな。

と、地味に反省しつつ、さらに視線を動かしてたら、Apple Watch の隣に立っていた女の人と目があった。

この人、数日前も俺の前に立って吊り輪を掴んでた。 小柄なせいで、吊り輪を掴む腕が小学生の挙手ぐらいの角度になっているのだが、その日は服がノースリーブだったので腋全開状態。 そしてその腋に、剃り残しの髭のような腋毛が。 オシャレに気を使っている感じの人だったのに、腋には黒く太く真直ぐ7mmぐらい伸びたのがまばらに。 その落差が俺の中では結構な衝撃で、あまり人の顔を覚えない俺の記憶に残っていたのだ。

よく見ると、毛の頭だけ覗いた剃り跡と思われる黒い点もちらほら見えて、その中に長いのがまばらに残る状態。 これ、むしろ残す方が難しいだろう。 いや、剃刀ならそうだが、髭の場合は、電気式だとある程度伸びたのはもう剃れなかったりするよな。 腋毛もそうなんだろうか。 いやいや、仮にそうだとしても、ノースリーブを着るなら剃り残しのチェックはするんじゃないだろうか。 とすると、これは知らずに剃り残してしまったのではなく、意図して剃り残したものだろうか。 その状態でノースリーブで吊り輪を掴んで脇全開って、ひょっとしてそういうプレイなのか?

その時、そんなことを考えながら、しばらくガン見状態だった。

今日、バスの中で目があって、そのときの事が鮮明に浮かんできて、ついでに罪悪感と敗北感のようなものも湧いてきた。

今日、短いながらも袖がある服を着ているのは、先日、全開の腋を俺にガン見されたからじゃないだろうか。 だとすると、この夏用にせっかく買ったお気に入りかもしれない服を俺のせいで着れなくしてしまった訳で、それはちょっと申し訳ないなぁ、とか。

あれは提灯鮟鱇の提灯のようなもので、俺はまんまと引き寄せられた小魚だったんじゃないか。 しかも食いつくつもりで食われるはずが 「こんな不味そうなおっさん要らないけど、とりあえず効果は確認できたから良し」 なんて思われてるんじゃないか、とか。

にも関わらず、バスが揺れて腕の角度が変わって腋が見えそうになるとつい視線が行ってしまうとか、なんかもう、どうなのかって。

ちなみに腋毛は無い方が好きだ。