1999 05 20

もっと転がれ

長い坂の上からビー玉を転がすと、転がすたびに違う道を辿る。 それは、その坂道の不規則な起伏のせいばかりではない。 ちょうど吹いた風に向きを変えられるかもしれない。 誰かが吐いた痰に引っかかってしまうかもしれない。 前に転がしたビー玉にぶつかってしまうかもしれない。

注目すべきは、転がっていく各瞬間瞬間で、運動を決定する法則は変わらないということだ。 環境から偶然に与えられる値が運動の様子を変えて行くが、運動を決定する法則はどこでも同じ。

人も、そんなもんじゃないかと思うことがある。 「こんな刺激を受けると、こんな変化をする」 という人に共通の法則だけを持って生まれて、後はいろんな偶然が、その人のその後を決定していくのかもしれないと。

子供を餓死させる母親も、そのニュースを見て怒ったり涙ぐんだりする母親も、どこかでたまたま小石にぶつかって転がり方が変わった、同じビー玉なのかもしれない。

それでも、それはそいつが選んだ結果なのだと、俺は言うんだけどね。