1998 08 20

笑顔

NHK の 「課外授業・ようこそ先輩」 を見た。 荒俣宏が小学校に行って、小学生に学校図鑑を作らせていた。 女の子が、学校のトイレの調査をしていた。 荒俣君の、 「男子トイレには、入ったのか?」 という質問に、恥ずかしそうに首を横に振る姿を見て、塾の講師をしていたときのことを思い出した。

授業の後、生徒の女の子と話していた。

「私、透明人間になれたら、やってみたいことがあるの」

「なに?」

「笑わない?」

「ん。 笑わないよ。 なに?」

「あのね、男子トイレがどうなってるのか、見てみたいの」

約束を破って、大笑いした。 「笑わないって言ったじゃない」 と言うふくれっ面は、 「そんなに見たけりゃ見せてやるよ」 という言葉で、たちまち解消した。

ほかの生徒が帰るまで待って、男子トイレを見せてやった。 「ふーん、こうなってるんだぁ」 なんて言いながら、あっちこっちチェックしてた。

「満足した?」

「うん。 満足」

そう言う顔が、ほんとに満足そうだった。

そうそう、もう一つ思い出した。

また別のある日、その子と話していた。

「私ね、彼氏募集中なの」

そう言われたら立候補するのがルールだと友人が言っていたのを思い出して、俺も言ってみた。

「じゃあ、俺でどう?」

「先生? 先生はねぇ、キープの一番!」

人差し指を立てた手を俺に向けてつきだして、得意そうな顔をしてた。 またずいぶんと意外なところで、一番になったものだ。

しかし、あれだな。 状況だけを言うと、 放課後、誰もいないトイレに女生徒を連れ込んだ ことになるわけだ。 なんとも、ろくでなしな響きだよな。