2010 08 20

ヌルナル

appleをアッポーとは言わない。 waterをワラとは言わない。 言えないのではなく、言わない。 しかし、pingはピンと言っている。 ピングではなくてピン。

「ピングは通りますか?」

「ピンならさっき試したけど、届きましたよ」

なんて、相手に合わせることも無くピン。 言いたくて言っている。

そんな俺にとって、とても微妙なところにいるのがnull。 ナルだ。 だが、ナルとは言えない。 ヌルと言ってしまう。

「あー、確かに、言われてみればナルですよね。 今まで何とも思わなかったけど」

「気付いちゃうと、言いたくなるだろ? ナルって」

「ちょっとなりますね。 言えないですけど」

「何で言えないんだろ?」

「何か恥ずかしいからですかね」

「やっぱり? こう、もう一人の自分に半笑いで見られてるような?」

「ちょっと近いかも」

「そういや、例外の質問してる人は何て言ってた? って、あれは ClassNotFoundException だっけ」

「そうなんですけど、えーと、ヌルですね。 ヌル参照とか言ってましたから」

「そうか。 やっぱ、俺等と同じように、ナルって言いたいけど言えない口かな」

「そうかも知れませんね」

「お互いに言いたいのに言えない状況ってのも滑稽だよね」

「ははは、それは確かに」

「この際だから、こっちから一歩踏み出してみれば?」

「このナルポインターエクセプションなんですけど、とか?」

「そうそう。 いきなりが無理なら、ナとヌの中間っぽい辺りから」

「そっちの方が恥ずかしくないですか?」

「あー… うん、さっきまで半笑いだったもう一人の自分が爆笑してそう」

「ですよね」

「あ、そこをナルって言えちゃうような奴だからナルシストなのか」

「あー、なるほど…って、一瞬納得しそうになりましたよ」

「でも、悪くないだろ?」

「まあ」

「あ、何か俺って今すごい得意気な顔してなかった?」

「あはは、上手いこと言ってやったみたいな?」

「うわっ、むしろこっちの方が恥ずかしい」

などと地味に落ち込んだりしつつ、周囲の人にも訊いてみたところ、全員がヌルだった。 ヌル派とナル派って、世間的にはどっちが多いんだろう。 9対1ぐらいでヌルが優勢じゃないかと想像するのだが。