雲がまるで押し寄せる巨大な津波のようだった。 そしてその向こうには 「うぇーい!」 なんて諸手を挙げる白い巨人が。
だいたいいつも7時前ぐらいからNHKを点けっ放しにしている。 とりあえずニュースは見て、後はパソコンの後ろで適当に流し見という感じで。 ちゃんと見るのはブラタモリと凄技ぐらいかな。 あ、歌番組になったらチャンネルを変えてるか。 流し見でも、歌謡曲はちょっと邪魔かもしれない。
先日もそんな感じで、自称貧乏女子高生の生活(?)を見るともなく見ていた。 貧乏アピールはまるで響かず、最後まで見て思ったのは、テレビに出てくる貧乏人がたいていデブだってこと。
俺はそのまま流して終わったけど、怪しいと思ったらちゃんと調べる人たちもいるんだね。 BIGLOBEニュースから。
NHKが18日に伝えた「子どもの貧困 学生たちみずからが現状訴える」というニュースで、貧困に苦しむ女子高生が取材を受けた。 パソコンを買うことができず、1000円のキーボードだけを買ってもらい練習したという辛いエピソードを語っていたが、この女子高生のものとみられるTwitterアカウントがネットユーザーによって特定。 趣味や食事を満喫している様子を多数投稿していたため、本当に貧困なのかと非難が殺到している。
NHKによると、この高校3年生の女子生徒は母子家庭で経済的に厳しく、入学金を払えないため希望するデザイン系の専門学校への進学を断念。 中学時代の授業では、パソコンを持っていなかったため、先生に「ダブルクリックして」「画面をスクロールさせて」と言われてもついていくことができなかった。 そして、母親から1000円ほどのキーボードだけを買ってもらい一生懸命練習したという。
しかし、女子高生の部屋にあるペンセットが定価約2万円の商品だとネットユーザーが指摘。 また、女子高生のものとみられるTwitterアカウントも特定された。 Twitterアカウントには、部屋にあった絵と同じものが投稿されているほか、「ONE PIECE」の映画を複数回鑑賞したこと、グッズを大量に購入したこと、1000円を超えるランチをよく食べていること、EXILEのコンサートや舞台のチケットなどが投稿されていた。 このTwitterアカウントは既に削除されている。
ネットでは、この女子高生に対して「なけなしの金で買ったと思われるキーボード(1000円)より昼飯の方が高いやんけ」、「こんなんしてるから貧困なんだろ」、「どんなツテで貧困女子高生として出演に至ったの」といった声が、NHKに対しては「なんで嘘の番組作るの?」、「NHKはヤラセはしないけど、甘すぎ 」といった批判が寄せられている。
まあ、そんなもんだよな。 「今日も暑い一日でした」 なんて街中の映像に映る人が、仕込みの劇団員だったりするのだ。 テレビの中の貧乏家族を本物の貧乏家族がやっていると思うことが間違いなんだろう。 あの手のものは再現映像だと思って見てればいいのだ。
貧困の定義は 「所得が中央値の半分以下」 だそうで、この番組のモデルになった家族も、きっとその枠には入っているのだろう。
NHKは何がしたかったんだろう。
童話のアリとキリギリスなら、彼女はきっとキリギリスで、番組の虚構を暴き非難する人たちは自身をアリの側だと思っているだろう。 そんなアリのアリっぷりを、水槽の外から眺めて楽しんでいたってのはないかな。
「夏に遊ぶキリギリスを横目に働いてきたアリにとって、何が大切かって話だよ」
「冬の食料ですか?」
「そりゃもちろんだけど、もう一つ、冬のキリギリスが惨めになっていることなんだよ」
「あぁ、そういう…」
「実際ほら、アリに救済を求めるのが運が悪かったからのように見せて、でも実は自業自得のキリギリスだと匂わせておくと」
「それがペンセットですか?」
「そう。 こんなに微かな匂いでも、あいつら絶対に嗅ぎ分けるんだよ」
「嗅ぎ分けちゃいましたね。 画面にちょっと写っただけなのに」
「まあ俺も、まさか翌日とは思わなかったけどね。 あいつら無駄に高性能だよな」
なんて感じで。