2000 05 21

笑顔

散歩。

河原のグラウンドで、ノックしていた親子。 子供は小学校の4年生ぐらいか。 父親はかなり手加減して打っているのだが、それでも子供はなかなか上手く捕れない。 トンネルしては、グラウンドの外の草原までダッシュ。 野球と言うよりはむしろ陸上のトレーニングだな、と思いながら見ていた。

「もう疲れたか?」

「ううん、まだ平気」

「よし、じゃあいくぞ」

キンッ!

またトンネル。 グラウンドの外まで転がっていくボール。 追いかけていく子供。

と、犬が走ってきて、ボールを咥えた。

「あらあら、だめよ」

陽気な声で、小太りのおばさんも駆けて来た。 犬の散歩らしい。 ボールを咥えたままの犬が、おばさんに駆け寄る。

「すいませんねぇ」

犬からボールを受け取ったおばさんが、子供にボールを投げる。 そのボールが子供に届かずゴロになったもんだから、また犬がダッシュ。 子供よりも先にボールをキャッチして、おばさんのところに駆け戻る。

「あんたが取っちゃ駄目でしょ」

犬に言い聞かせながらボールを受け取って、おばさんがもう一度投げる。 またゴロ。 犬がダッシュしてキャッチ。

「また犬に取られたのか。 わははは」

父親が大笑いしている。 子供も笑っている。

「ほんとにすみませんねぇ」

と、全然すまなくなさそうな顔でおばさんも笑っている。 犬もなんだか得意げな顔で楽しそう。

気が付けば俺も笑っていた。 風が気持ちいい。