2016 06 22

鉄道自殺

東洋経済ONLINEに鉄道自殺の統計が出ていた。

鉄道会社が国土交通省に提出した文書を基に、2005年度から2014年度までの10年間で、未遂を含む自殺件数が80件以上となった全国22路線(首都圏15路線、首都圏以外7路線)の状況を集計したところ、首都圏15路線の人身事故は10年間で3145件。そのうちの63%に相当する1985件が鉄道自殺だった。

〜中略〜

首都圏の主要路線のユーザーは、東西南北どこへ行くにも、自殺と無関係ではいられない。 首都圏の15路線だけで10年間に計1985件もの自殺が起きている。 1カ月あたり16.5件、2日に一度というペースだ。 首都圏の鉄道網を日常的に使うということは、1日おきに住人が飛び降りるマンションに住んでいるようなものかもしれない。 感覚を麻痺させなければ、耐えられそうにない。

なお、東京メトロや都営地下鉄の路線は過去10年の自殺数が80件以下なのでランキングには入っていない。

このところずっとバス通勤たまに京王線の俺だが、就職してから暫くは中央線を使っていた。 バスは雨が降った時にちょっと混む程度だが、当時の中央線は毎朝大変な混雑で、会社に着いただけでもう1日の仕事を終えた気分になった程だった。

そんな状況だったからか、人身事故で電車が遅れているというアナウンスを聞いても、可哀想とか大丈夫だろうかとか全く考えなかったな。 人身事故即ち自殺と決めつけて 「死ぬなら人に迷惑をかけ無いように一人ひっそり死ね」 と思ってた。 俺の感覚は麻痺してたのか?

まあそんなことはどうでもよくて、記事中にあった路線別の自殺件数がこれ。 記事では首都圏とその他とで表が分かれていたが、分ける意味が無い気がしたので合体して上位10路線まで。

過去10年における路線別の自殺件数
順位 路線名 自殺件数 人身事故件数 自殺率(%)
1 JR中央線 253 386 65.5
2 JR常磐線 196 298 65.8
3 東武東上線 185 276 67.0
4 JR京浜東北線 180 293 61.4
5 JR神戸線 141 266 53.0
5 JR東海道本線 141 275 51.3
7 JR宇都宮線 130 200 65.0
8 JR高崎線 127 169 75.1
9 JR東海道線 122 178 68.5
10 JR鹿児島本線 118 239 49.4

中央線ぶっちぎり。

単に距離が長いから件数が多いのか、もっと違う要因があるのか、その辺りを検討するために営業キロ1kmあたりの自殺件数も掲載されていた。 こちらも、記事中では首都圏とその他に表が分けられていたが、ここでは合体して上位10路線まで。

1キロあたりで見た路線別の自殺件数
順位 路線名 営業キロ(km) 自殺件数/km
1 JR中央線 53.1 4.8
2 JR山手線 34.5 3.3
3 JR京浜東北線 59.1 3.0
4 東急田園都市線 31.5 2.9
5 JR総武線 43.5 2.6
6 東武東上線 75.0 2.5
7 京王線 37.9 2.1
8 西武新宿線 47.5 2.1
9 JR高崎線 74.7 1.7
10 JR西武池袋線 57.8 1.6

やっぱり中央線がぶっちぎり。

関連記事に駅別のランキングも示されていた。 駅というが、件数は

A駅で1件、A駅〜B駅間で1件の自殺がおきたとき、A駅は2件という集計

と、駅構内だけではなく隣接する駅間の線路上も含めてのもの。 なので、妥当なのは 「鉄道自殺の多い地域の駅」 ぐらいの表現だろうが、記事には駅とあるので、ここでもその表現をそのままで上位10駅まで。

過去10年に自殺が発生した駅
順位 駅名 都道府県 自殺件数 人身事故件数 自殺率(%)
1 JR:西八王子駅 東京都 39 42 92.9
2 JR:桶川駅 埼玉県 34 38 89.5
3 JR:川崎駅 神奈川県 31 43 72.1
4 JR:新小岩駅 東京都 30 35 85.7
4 JR:新宿駅 東京都 30 54 55.6
4 JR:八王子駅 東京都 30 35 85.7
7 JR:茅ヶ崎駅 神奈川県 29 39 74.4
8 JR:北本駅 埼玉県 24 30 80.0
9 JR:国立駅 東京都 23 24 95.8
10 JR:品川駅 東京都 22 41 53.7
10 JR:赤羽駅 東京都 22 34 64.7

これまた中央線。 しかも1位と4位は隣接駅。 この点については、記事でも言及されている。

西八王子駅と八王子駅は隣接しており、東京駅側から見ると、豊田駅、八王子駅、西八王子駅、終点高尾駅と続く。 八王子駅の30件と西八王子駅の39件を合わせた69件というのは、両駅構内での自殺に、豊田~八王子、八王子~西八王子、西八王子~高尾の各駅間での発生分を加えた数だ。

豊田駅の登場件数が10件、高尾駅は11件であることから、西八王子駅と八王子駅のエリアで自殺が多発していることがわかる。

〜中略〜

JR東日本によると、新宿駅は1日平均約75万人(14年度)が乗車し、同社の乗車人数のランキング第1位の駅だ。 川崎駅は20万人で第10位。 このような大規模駅が関係する自殺が10年間で30件程度だから、八王子駅(乗車人数8万5000人)や新小岩駅(同7万2000人)、西八王子駅(同3万1000人)、桶川駅(同2万6000人)、北本駅(同1万9000人)のエリアでの自殺件数が、いかに突出しているかがわかる。

件数の数え方は 「駅構内+隣接駅間」 なんだよな。 なので八王子と西八王子の件数はそれぞれ

となる。 記事ではこの二つの駅の合計69件を 両駅構内での自殺に、豊田~八王子、八王子~西八王子、西八王子~高尾の各駅間での発生分を加えた数 と説明しているが、単純に足しちゃ駄目だろ。 隣接駅の数字をそのまま足すと、駅間、ここでは 八王子〜西八王子 が二重カウントになるじゃないか。

東洋経済って、看板に 「経済」 なんて文字を掲げておきながら数字はこの扱いってどうよ。 それともこうした数字の扱い、何かを強調するためには少々の嘘には目を瞑ることこそが経済なのか?

と、細かいツッコミを入れていたのだが、そもそも公表された数字が微妙で、厳密にカウントするともっと増えるらしい。 関連記事をもう一つ。

「ホーム西端付近から飛び降り軌間内に寝転んだ」
「ホーム上から飛び降りて軌間中央で立ち尽くす」
「ホーム手前端付近から飛び降りる」
「ホームから小走りに線路内に飛び降りしゃがみ込んだ」

これらは兵庫県内を走る山陽電鉄本線の事故概要の一部である。 この表現を読む限りでは、いずれも自殺とみられるが、原因はすべて「線路内立入り」となっている。 つまり自殺ではない。

国土交通省鉄道局の安全担当者によると、自殺として記載されるのは警察が認定した場合だ。 実際には自殺ではない可能性や、自殺と記載しない何らかの事情があるのかもしれないが、詳しいことはわからない。

〜中略〜

つまり、人身事故の発生から30分以内に運転再開し、警察が自殺と認定した場合、鉄道会社は報告しなくてもいいのだ。 6014件の自殺の中に、例えば京急本線の自殺割合が低いのは、運転再開までの時間が短いためだろう。 また、JR新小岩駅で自殺が多発するきっかけとなった2011年7月12日の人身事故も、なぜか整理表には記録がない。

したがって、図表および本文中の鉄道自殺数は、正確には件数の前に「少なくとも」がつく。 集計期間中の鉄道自殺数は、「少なくとも6014件」というわけだ。

鉄道システムの安全・安定を維持するという観点からも、国や鉄道会社はホームドアの設置など鉄道自殺を防ぐべき施策を講じなければならない。 それにはまず、現状の実態を正確に把握することが必須で、そのためにはすべての自殺が報告されるべきではないだろうか。 しかし、国土交通省鉄道局の安全担当者に聞くと、そのような方向での検討は、「ない」という答えが返ってきた。

ところで鉄道自殺の防止策だが、ホームドアなどの物理的な対策と併せて、精神的な対策もやればいいんじゃないかと思う。 精神的な対策というのはつまり 「あんな死に方はしたくない」 と思わせること。 具体的には 死体をそのまま晒しておく なんてどうだろう。 電車の運行の妨げにならないように最低限の掃除だけして、後は烏や野良猫や虫に任せるのだ。

大切なのは、自殺予備軍に鉄道自殺をしたらどうなるかを見せること。

鉄道自殺は比較的若い層が多いらしい。 そういった世代なら尚更、死後の自分があんな醜い状態になると知ったら、鉄道自殺は思いとどまるのではないだろうか。

まあ、きっと何か他の方法で自殺はするんだろうけどさ。