無駄に忙しい。 そんな忙しい時間のわずかな隙間に。
「こないだエアバッグが開くのを見たんですけど、凄いんですね、あれ」
「凄いって、開く勢いが?」
「そうです。 なんか、あれはあれで怪我をしそうな」
「あー、そうかも。 俺も以前にテレビで見て、同じことを思ったよ」
「あーゆーのを見ると、ちょっと怖くなりますね」
「まあ、死ぬよりはいいんだろうけど、あれで顔を殴られるのも、ねえ」
「そうなんですよね」
「あれってさ、どうせ痛い思いをするんだから、何か付加価値がほしいよね」
「付加価値ですか?」
「うん。 痛くても、まあこれならいいかって言えるような」
「そんなの有りますかね」
「んー…無いかも」
「ですよねぇ。 事故じゃ、生きてるだけでも価値があるんだし」
「あ、衝撃を受けて開くエアバッグが峯不二子ってのはどう?」
「あはは、そっちですか」
「うん。 ちょうど胸の谷間に顔が埋まるようになってるんだよ」
「なんかちょっと楽しそうですね」
「せっかくだから、暖かさと柔らかさ、感触までリアルに再現!みたいなのをね」
「あ、でも、私はどっちかって言うと、小さいほうが好みなんですけど」
「そうなの?」
「そうなんですよ」
「でも、貧乳のエアバッグだと痛いよ? と言うか、死ぬよ?」
「それはそうなんですけど…」
趣味に命を懸けるのも有りか。