鹿児島の端、宮崎の境辺りに志布志という場所がある。 正確には、鹿児島県志布志市志布志町志布志。 だから何ってことはなくて、地図で見つけて、文字の並びが気に入ったのだった。 いつか行ってみたい。
そんなことを思いながら、クソ寒いマシン室で作業する日々。
「もう毎日言ってるけど、寒いよね」
「そうですよね。 本当に寒いです。 御陰でちょっと風邪気味ですよ」
「それでコートか。 俺も着ようかな」
「これでもまだ寒いぐらいですから」
「マシンを冷やさなきゃってのは判るけど、この時期にエアコンかけて冷やす必要って無いよね」
「どうせ寒いですからね」
「そう、窓を開ける方が電気代もかからないし、俺等の諦めもつくっての」
「いや、僕はむしろ窓を開けられた方がショックです」
「あ、そう? 確かにそうかもね。 まあ、言いたいのは、マシンと俺等とどっちが大切かってことだよ」
「なんか、マシンって即答されそうですよね」
「即答どころか、ちょっと怒って『そんなのマシンに決まってるだろ!』なんて?」
「ははは、そうです。 実際にそんな風に言われたら、その場で帰りますけど」
「そうか? 実際に言われたら、『ですよねー』なんて言っちゃうんじゃないの?」
「あー… すいません、多分そっちです」
「あはは」
そして溜め息。 吐く息が白くなったりしないのが、せめてもの慰めか。
寒い中でふと気付いたのだが、相撲の八百長防止に、着ぐるみはどうだろう。 あれは、誰と誰が対戦するかが事前に判っているから、互いの申し合わせができるんだよな。 だから、相撲協会でも、事前に取り組みを教えないことを対策として検討するのだし。
で、そこをもう一歩進めるのが着ぐるみ。 実際の取り組みになっても、誰と対戦しているのか判らなくしてしまうのだ。 誰が何を着るかは固定しない。 固定するとバレてしまうからね。
着ぐるみとして子供に人気のものを用意すれば、相撲ファンの裾野も広がって一石二鳥。 ドラえもん、キン肉マン、クレヨンしんちゃん、キティちゃん、怪しい鼠、プリキュア、などなど。 「キティちゃん VS 怪しい鼠」 なんて、子供には夢の対戦カードじゃないか。
ついに決着をつける日がやってきました。 やはり猫が圧勝するのか。 それとも窮鼠猫を噛むのか。 全国の子供達が固唾をのんで見守る中、両者堂々の土俵入りです!
みたいなの。 ああ、でも、体型がネックになる着ぐるみもあるのか。 ドラえもんとか怪しいアヒルならいいけど、120kg超あんこ型同士の 「プリキュア VS セーラームーン」 なんて、夢は夢でも悪夢でしかないもんな。 いや、これはこれで見てみたい気もするけど。
対戦で思い出したけど、子供の頃、 「デビルマン VS マジンガーZ」 なんて映画があったんだった。 デビルマンとマジンガーZが戦うのかと思って期待して見たんだけど、これがさっぱり。 共闘して敵に当たって、当然勝ってめでたしめでたしで終わり。 タイトル大嘘。 今思い出しても腹が立つ。
夏場所の夢の対決を見る子供達に、あんな思いはさせたくないものだな。