2017 06 23

語り部の語ることと語らないこと

NHKの朝の番組で、沖縄戦の語り部が出て話をしていた。

米軍から逃れて洞窟の中に皆で隠れ潜んでいたら、弟が泣き止まないからと追い出された。 人が人ではなくなった。

そんな話。

まあ、追い出された立場なら、追い出そうとする人を人で無しと思うのも無理は無いだろう。 でもこの人、自分が辛かった話ばかりで、追い出した側がどんな気持ちだったかに一言も触れなかったんだよな。 それがなぁ…。

追い出した側だって、きっと悲しい気持ちだっただろう。 人の子と我が子を天秤にかけての苦渋の決断だったかもしれない。 天秤にかけたのは、我が子だけじゃなくて洞窟に潜む他の人たち全てかもしれない。 出て行ってくれと言いたいけど、やっぱり可哀想で言えない人や、自分が悪者になりたくなくて言わない人がいることを察して、憎まれ役を買って出たのかもしれない。

逆の立場だったらどうだろう。 泣き止まない子供は出て行って欲しいと思わなかっただろうか。 その子が泣き止まないせいで弟が死んでもしょうがないと思ったのだろうか。 仮にそうだとして、誰か他の人が追い出そうとした時に止めるのだろうか。 追い出されたとき、心のどこかでホッとしたりはしないだろうか。

もちろん、NHKの編集でそうなったしまった可能性もあるが。

これが編集の結果だったとしたら、その狙いは何だろう。 本人の口から 「私も辛かったが、あそこにいた人たちも辛かったろう。 悪いのはあそこにいた人たちじゃなくて戦争だ」 と言わせてもよさそうなものだが。 70年以上経った今もただ 「追い出されて辛かった」 と繰り返すことしかできない程に人を壊すのが戦争って言いたいのかな。