せっかく高尾山に行ったのだが、あまりの人の多さに登るのは中止。 高尾山口から高尾までの一駅を、紅葉を見ながら歩くことにした。
線路をくぐって石段を登ると、そこは神社。 それほど広くない土地が綺麗に落ち葉に埋まって、一足毎に乾いた音を立てる。 その音が何となく嬉しくて、わざとワシャワシャ音を立てながら歩いていて、ふと顔を挙げると、男の人と目が合った。 その顔はハンセン病の後遺症のように崩れて、特に顎の左側が大きく膨れ上がっている。 その崩れた顔の上に、大きな赤紫の斑模様。 何事も無いかのようにゆっくりと目を逸らしたのだが、そのときの俺はたぶん 「びっくりした顔を見せてはいけないと自制している顔」 をしていたのだろうと思う。 男は、大きな望遠レンズを付けたカメラを、すぐ下の線路に向けていた。 電車を撮っていたのだろう。 「あいつ、電車を撮っても、電車に乗ることは無いのではないか?」 などと考えながら、神社の石段を下りた。 振り返ると、男はすこし場所を変えて、またカメラを構えていた。
高尾駅前にある店は、確か京王ストアー。 2階の本屋に行くのにエスカレーターに乗るのだが、このエスカレーターは、左右の手すりのスピードが違う。 左の方が少し遅い。
電車に乗った。 その車輌にはやたらに子供が多い。 子供同士はしゃぎ回っている様子、親同士喋っている様子からすると、どうやら小学校繋がりの家族連れ遠足らしい。 みんなで高尾山に登ったのだろう。 隣の車輌に逃れようとしたが、通路には荷物が山積みになっていて通れない。 騒がしい車内に、ただ苛々しながら耐えるしかないのか。 と思っていたら、電車が止まってドアが開いたとき、隣のドアから子供の悲鳴。 「挟まった!挟まった!」 とか、 「ドアを閉めろ!」 とか、おっさん数人が叫んでいる。 子供の手が戸袋に引き込まれたらしい。 その子供は、遠足集団の一員であるらしい。 子供の手が引き出される間、 「みんなで降りよう」 などと言っているので、みんな降りるのかと密かに嬉しく思っていたのだが、降りたのは結局、挟まった子とその母親だけだった。 そしてまた煩い電車。 子供は嫌いだ。
結局、今日見た中で一番綺麗に色付いていたのは、家の裏にある紅葉だった。 しかし、いろいろ見れたので、歩き回ったのも無駄ではない。
花弁のように色付いても、花弁と見間違えることは無い。
燃えるような赤。
寒くなると、葉と枝を繋ぐ管(導管とか師管とか)が塞がれる。 しかし塞がってもしばらくは、葉は養分を作り続ける。 こうして作られる行き場の無い養分から、アントシアンという赤い色素が作られる。