帰りが遅い日が続くと、父の酒量が増える。 遅いと言っても、8時をちょっと過ぎるぐらい。 アパートで一人暮らしをしていた頃の俺にすれば、特にどうってことも無い時間だが、たいてい9時には寝てしまう父にとっては、かなり遅い時間なのかもしれない。 いや、寝る時間よりも、一人で食事をすることが、寂しさを感じさせるのかもしれない。
一日なら平気。 二日目も、まあ、大丈夫。 三日目になると、ちょっと様子がおかしい。 四日目には、足元が覚束ないぐらいに酔っている。
ゴミ箱には、握りつぶされた酒のパック。 「鬼殺し」 という150mlのパックが、先日、ふらつくほどに酔っていた日には、見える範囲で5個捨てられていた。 テーブル脇においてあったレシートを見ると、午前中に5個、午後からまた4個買ってきたらしい。 それを全部飲んだのなら、この一日だけで一升近くになる。
小さなパックの一つ二つにとやかく言うつもりは無いが、足がふらつくまで呑むのは拙い。 見かねて注意し、翌日からは、忙しいときでも翌日だけは、早く帰る。 それで暫くは改善されるのだが、忙しくて帰るのが遅くなるとまた酒量が増えていく。 また注意して、早く帰るようにして…の繰り返し。
ひょっとすると、 「呑み過ぎると俺が早く帰ってくる」 という成功体験になっているんだろうか。 早く帰らないで、寂しさに慣れさせたほうがいいんだろうか。 いや、そう考えるのは、俺がこうした生活を、自分が思ったよりも負担に感じているからだろうか。 だから、何か逃げ出す口実を探しているんだろうか。
まあ、疲れてるんだよな、俺も。 忙しいから帰りが遅くなるのだ。 帰ったときは結構疲れているのだ。 そんなときに、帰ってきてまた心配の種を見ると、そりゃ気持ちも沈むだろう。 って、何か他人事みたいだな。 とりあえず、なるべく早く帰ろう。 どうしても駄目そうなら病院、の前に、断酒会でも行ってみるかな。