2017 05 25

ATM

自分で作った minesweeper に予想外に嵌る日々。 バスの中などのちょっとした時間にできる手軽さがいいのだな。 相変わらず高確率でハズレを踏んで爆死するが。

で、やってて気付いたのだが、iPhoneのSafariは画面を開きっぱなしにしたまま長い時間バックグラウンド状態にしておくと、前にもってきた時にリフレッシュかけるんだね。 朝のバスの中でやりかけの続きを帰りのバスの中でやろうとしたら、リフレッシュがかかって真っ新になってしまった。 後ちょっとだったのに。

一瞬、保存機能を作ろうかと考えた。 仮想マップをそのままJSON形式で保存/復元すればいいので、保存機能の実装は簡単だし。 でも一瞬でやめた。 そもそもがちょっとしたゲームなので、後ちょっとって状態になるまでの時間もちょっとなんだよな。 惜しい時間じゃ無いし、さっさと次を始めりゃいいのだ。

なんて思いながらも次を始めず、久しぶりに何かSSでも読むかと探して見つけたのが結構面白かったので、見失ってもいいように全文載せておく。

女友「ねえねえ、今あんた彼氏と同棲してるんでしょ? どんな人なの~?」
女「どうってことないわよ、あんなの」
女「私の彼なんて、ハッキリいってATMだしぃ~」
女友「あら、ひっどーい!」
キャハハー! アハハー!

<マンション>

女「ただいまー!」
ATM「お帰りなさいませ」
女「はぁ……ホントにATMなんだよね……」
女「ATMのような彼氏ってのはともかく、ATMが彼氏なんて、世界中どこ探しても私ぐらいだろうなぁ」
女「そもそもこいつ、男なのかどうかも怪しいし」
ATM「私は性別的にはオスです」
女「オスなんだ……」
ATM「オスなのです」
女「あーあ、私どうしてATMなんか彼氏にしちゃったんだろ……」

~回想~

女「ふぅ~……」
女「このところ飲み会が多くて、すぐ財布がすっからかんになっちゃう」
女「お金を下ろさないと……」
ATM「お取り引きを選択して下さい」
女「はいはい」ピッ
ATM「カードをお入れ下さい」
女「はいはいっと」シュッ
ATM「暗証番号を入力してください」
女「はいはいはい……っと」ピッポッパッ
ATM「うっ!」ウイウイン
女「へ?」
ATM「ピー、ピー、ピー」
ATM「私にこれほどの快感を与えるとはやりますね」
女「なに!? なんなの!?」
ATM「私はあなたに惚れました。ぜひ私と付き合って下さい」
女「ハァ!? 付き合う!?」
女「冗談じゃないわ! なんでATMなんかと!」
ATM「でないと、お金は出しませんよ」
女「ぐぬぬ……なんて奴なの」
女「こうなったらこのATMの銀行に電話してやる!」

銀行員「どうやら、このATMはあなたに恋をしてしまったようですな」
女「恋ィ~?」
銀行員「私も銀行勤め30年のベテランですが、こんなことは初めてです」
女「そりゃそうでしょうよ……」
女「しっかし、なんでまたATMは私に恋を……?」
ATM「A(愛は)T(突然)M(目覚めるもの)」
女「うっさい!!!」

銀行員「ご安心下さい。お客様が必要なお金は私から直接お渡しします」
女「そうしてもらうと助かるわ」
銀行員「ところで、このATMと交際していただくわけにはいかないでしょうか?」
女「いくわけないでしょ!」
銀行員「……だそうだ。残念だが、諦めなさい」
ATM「諦められません」
ATM「愛をお受け取り下さい」ピーピーピー
ATM「愛をお受け取り下さい、愛をお受け取り下さい、愛をお受け取り下さい……」ピーピーピー
女「あーもう、うっさい!」
女「分かった! 分かったわよ! 付き合ってあげる!」
ATM「ご交際いただき、ありがとうございます」

……

女「あーあ、私なにを血迷ってたんだろ」
ATM「あなたと交際できなければ、私はきっと役に立たないATMとして処分されていたでしょう」
ATM「ありがとうございます」
女「ふん……勘違いしないでよね。あれは愛なんかじゃなく、ただの同情心よ」
女「夕ご飯作るけど、なに食べる?」
ATM「A(アジフライ)T(トンカツ)M(味噌汁)」
女「はいはい」

女「できたよ」
ATM「食事をお入れ下さい」ウイーン
女「……ったく、食事が必要なATMってなんなのよ」
女「実は中に人が入ってるなんてオチなんじゃないの」
ATM「入っていません」
女「はい、味噌汁」ジャバッ
ATM「おいしいです。お食事、ありがとうございました」ピーピーピー
女「……どうも」

女「おやすみ」
女「すぅ……すぅ……」
ATM「ピー、ピー、ピー、ピー、ピー」
女「うっさい! いびきするな!」
ATM「失礼しました」

ATM「おはようございます」
女「おはよう」
ATM「今日の分の生活費です。現金をお受け取り下さい」ウイーンガシャッ
女(わっ、10万円も……)
女「いらない! 私は自分の食い扶持は自分で稼ぐ主義!」
ATM「しかし、それでは私の気がすみません」
女「ATMのくせに、気なんかつかわなくていいの!」
女「行ってきまーす!」

女「ただいまー」
ATM「お帰りなさいませ」
女「あら、ホコリがついてる」
女「拭いてあげるね」フキフキ
ATM「ありがとうございます」

フキフキ…

女「……」
女(もうこいつと同棲して半年になるけど……)
女(なんだか私……本気でこいつに惚れちゃってるのかも……)
女(ブサイクも三日で慣れるなんていうけど、ATMも半年も付き合えば慣れちゃうもんなのね……)

――

女「ねえ……今夜はデート行こうか」
ATM「どういう風の吹き回しですか」
女「彼氏とデートしない女がどこにいるのよ」
ATM「しかし、私は自力で歩けませんよ」
女「銀行の人がATMを持ち上げる機械と運ぶ台車を貸してくれたわ」
ATM「準備がよろしいですね」
女「さ、レッツゴー!」ガラガラ…

ガラガラ…

女「台車に乗せてても結構重いわね……」
ATM「すみません」
女「昔、ATMごと持ち去るなんて強盗が流行ったけど、ATMとデートする女ってのは世界初でしょうね」
女「だけど、たまにはデートもいいもんでしょ」
ATM「はい、最高です」
ATM「A(ああ)T(とっても)M(満足)」
女「いちいちATMにしなくていいから!」

ガラガラ…

女「あっ!」
女友「あら、あんたATMなんか運んでどうしたの?」
女「ああ、これ私の彼氏よ」
ATM「はじめまして」
女友「え~~~~~!?」
女「じゃーねー」ガラガラ…
女友「……まさか本当にATMだったとは」
女友「だけど……なぜかとても幸せそうに見えるわ……」キュンッ

<高級レストラン>

女「どう? おいしい?」
ATM「はい」
ATM「ですが、いつもあなたに作ってもらってるATMの方がおいしいですね」
女「ったく、ATMの分際で口がお上手なんだから」

支配人「こちら明細です」
ATM「私が払いましょう」ウイーンガシャンッ
女「ダメよ、ワリカンよ! 半分ずつ!」
ATM「しかし、私はお金をたっぷり持ってますよ?」
女「私は……彼氏がATMなのはともかく、彼氏をATM扱いするような女にはなりたくないの」
ATM「やはりあなたに惚れた私の判断は正しかったようです」
支配人「泣けるぅ~! よっしゃ半額にします!」

ガラガラ…

女「さて、帰りましょうか」
ATM「はい」

強盗「おい、そこの姉ちゃんとATM……待ちな」

女「なに、あんた!?」
強盗「一時期、世間様を騒がせたATM狙いの強盗よ」
強盗「このところATMの監視や警備が激しくなって仕事ができなかったが……」
強盗「まさかのんきにATMを運んでる女がいるとはな……」
強盗「これぞ飛んで火に入るATMってか! ギャハハハハッ!」
女(しまった……! やっぱりデートなんかするんじゃなかった……!)
ATM「ご安心下さい。あなたは私が守ります」
女「動けないあんたがどうやって守るってのよ!?」
ATM「すでにSOSは送ってあります」
ATM「私には常に、凄腕のガードマンがついているのですよ」

ザッ!!!

警備員A「元ボクシングヘヴィ級チャンプです」
警備員B「元オリンピック柔道金メダリストです」
警備員C「元某国の特殊部隊のエリートです」
強盗「え……」

ギャアァァァァァ……!

ATM「A(悪は)T(徹底的に)M(滅します)」

女「……ありがと」
ATM「いえ、ATMとしてはあれぐらいの防犯機能は当然のことです」
女「ねえ……」
女「私……すっかりあなたに惚れちゃったみたい。このまま結婚したい」
ATM「私もですよ」
女「だけど、私とあなたじゃ子供は作れない……それだけが残念だわ」
ATM「そんなことはありませんよ」
女「へ?」
ATM「A(赤ちゃん)T(作って)M(みせましょう)」

女「そんなこといったって、どうやって!?」
ATM「体をお入れ下さい」パカッ
女「わっ、ATMの中にちょうど私が一人入れるスペースが! こ、こう……?」ゴソッ
ATM「次は私をお入れします」ウイーン
ATM「中で出します」
女「あああああ~~~~~~~~~~~っ!!!」

ウィンウィウィウィン… ウィンウィウィウィン… ウィンウィウィウィン… (通帳記帳の時の音)

……

…………

赤子「おぎゃあ、おぎゃあ、おぎゃあ……!」
ナース「元気な男の子ですよ~!」
ATM「よく頑張りましたね」
女「ありがとう……」
女「てっきり機械人間みたいのが産まれると思いきや、ちゃんと人間が産まれたわね」
ATM「ATMだって頑張れば、人の子供ぐらい作れるのですよ」ウイーン
女「これから……幸せな家庭を築きましょ」
ATM「はい」

――

――――

教師「この子は優秀ですよ。私が保証します」
女「ありがとうございます」
教師「ただ……」
女「ただ?」
少年「先生、こないだぼく授業中騒いでた子を静かにさせたから、その分成績上げといてね」
教師「ちょっと性格が現金なのがタマにキズですかねえ……」
女「きっと、主人に似たんだと思いますわ」
少年「ねーお母さん、晩ご飯はアジフライとトンカツと味噌汁にしてね!」

―おわり―

短い中にちゃんと起承転結があって、しかもテンポがよくて読みやすい。

これ、途中でちょこちょこ入る他の人のコメントも面白かった。 デートの二人(?)を見送る女友がキュンとしているのに

友達もちょっとおかしい

とか、声を上げて笑いそうになった。 バスの中なので辛うじて堪えたが、肩が震えて挙動不審っぽくなってしまったよ。

ところで、こういうのが上手い人って最初から割と上手いのだが、下手な人はいつまでたっても下手なんだよな。 今更だけど、才能の差ってのはもうどうしようもないね。