「まだ空爆やるの?」
「やるよ」
「誤爆は?」
「しない方がいいけど、しょうがないよね」
「地上戦にしたら、民間人の犠牲者は減るんじゃない?」
「うーん…地上戦だとこっちに被害が出るからなぁ」
「敵の民間人より自国の軍人か。
そういや、お前らが空爆する国ってさぁ、弾道ミサイルを持ってないところばっかりだよな」
「そりゃそうだよ。
危ないじゃん」
「空爆賛成が40%ぐらいだっけ」
「もうちょっと多いかな」
「その人達ってさぁ、自分らの支持で人が死んでるって思ってるのかな」
「どうかな。
あんまりイメージ無いと思うよ」
「俺、思ったんだけどさぁ。
引き金だけ遠隔操作ってのはどう?」
「引き金だけ遠隔操作?」
「そう。
引き金だけ遠隔操作。
全部遠隔操作でもいいんだけど、まあとにかく戦闘機だか爆撃機だかが飛んでいってさ。
適当なタイミングで、空爆賛成派の中から選ばれた民間人が引き金を引くんだよ。
もちろんテレビでその模様を中継。
撃ちまショーなんて。
んで、鉄橋を壊しましたとか、テレビ局を破壊しましたとか、ユーゴ軍人を何人殺りましたとか、そんな写真をバックににっこり。
釣った魚を持ち上げてにっこりするみたいに」
「誤爆で民間人を殺っちゃったら?」
「その時はお前の出番だよ」
「俺?」
「そ。
『責任は大統領である私が取る』なんて、殺した民間人の数だけお前を鞭打ち」
「鞭打ちは嫌だなぁ」
「犠牲者のことは忘れませんってアピールなんだけど。
だいたい誰が死んだかも調べてないんだろ?」
「そんなことはないよ。
犠牲者の名前は調べてるよ」
「そうかぁ?
なんか怪しいけどって、おい、お前その腕どうしたんだよ」
「何でもない」
「何でもないって…それ入れ墨か?」
「本当に何でもないって」
「何でもないなら見せたっていいだろうが」
「……」
「1999…コソボ…あとは名前?
これって…」
「だから、犠牲者の名前。
誤爆したときは誰が死んだか調べてるって言ったろ」
「それ全部入れ墨にしてんの?」
「何があったか忘れないようにね。
やっぱりほら、誤爆にしても、元は俺が出した命令だからさ。
まぁこれは秘密にしとくつもりだったんだけど」
「秘密にして置くつもりがばれてしまうことにするつもりだったくせに。
それにしても入れ墨とはねぇ…あ、ここの日付、間違ってないか?」
「日付?
…あっ、ほんとだ。
貼り替えなきゃ」
「貼り替える?」
「あ…いや…」