小学校の頃、先生から 「人間と他の動物の違いは何ですか?」 なんて訊かれたことがあった。 それが何の時間だったかはもう忘れたが、俺含めた子供らの答えは薄っすらと覚えている。
火を使う。 道具を使う。 服を着る。 言葉を話す。
そんな感じの、とても小学生らしい回答だった。
ちょっと前に見たテレビでも、同じようなことを問われた小学生が同じように答えていた。 まあ小学生なんて時代を超えてそんなものなんだろうけどさ。
同じ質問を大人にしたらどうなるんだろうと検索して見たら、Yahoo!知恵袋にそのままの質問があった。 そのベストアンサーがこれ。
ヒトと他の動物との最大の違いは、言語中枢の発生により、後天的に獲得した知恵や技術などの情報を言語中枢の働きによって単純な記号に変換し、さらに仲間に伝達して社会的に蓄積し、共有できるようになったことです。
大人の回答っぽくていいね。
ちょっと面白いのは、子供も大人も回答の方向性が同じこと。 問われているのは 「違い」 なのに、回答として挙げるのはどれも 「優れている点」 なんだよな。 質問にそうしたニュアンスが含まれているから、回答も無意識に質問者の意図に沿う方向に偏ったって可能性も否定できないが。
まあそれはそれでいいとして、これらの 「〜ができる」 系の回答が出尽くした後に それらが何もできない場合、それは人間ですか? と質問したらどう答えるだろう。
火を使えない。 道具を使えない。 服を着れない。 言葉を話せない。 言語中枢があまり発達していなくて、経験を仲間へ伝達したり共有したりできない。 そもそも経験を自分の中にも蓄積できない。 それでも人間といえるのか?
きっと 「それでも人間だ」 と答えるんだよな。 直前の自分の答えを否定することに内心葛藤しながらも、教育の成果を発揮して。 或いは空気を読んで。
HNKの朝の番組内で、相模原の障碍者施設襲撃事件から2年後の障碍者を取り上げていた。
同じような番組はこれまで何度も放送されているのだが、俺が見た範囲ではどれもみな、取り上げるのは軽度障碍者ばかりだった。 今回もそう。 犯人が殺そうとしたのは人間の条件をぼぼ満たせないような重度障碍者だったはずなのに、そこには一切触れないまま、テレビが映すのは人間の条件をほぼ満たす軽度障碍者。 いかにもこの人たちを殺すつもりだったように。
もちろんこうした人たちじゃないとインタビューに応えられないというテレビの事情もあるだろうが、とばっちりで被害者になったのを 「とばっちりだった」 と報じることはできるはずだよな。 本来のターゲットではなかったと。 でも、そうしない。
そうしないことがある種の意思表明、あいつがやったのはこんなに酷いことなんだとアピールして同情を集めるのに重度障碍者は使えないと判断したと見られることを、NHKはどう考えてるんだろう。
いやまあ、そんな目で見るのが俺だけって可能性もあるんだけどさ。