1998 11 26

透明人間

目が覚めたら、頭痛と腹痛と吐き気。 暇なのを幸いに会社を休んで、今日一日のほとんどを布団の中で過ごしているのだが、いっこうに回復しない。 寝てるのにも疲れたし厭きた。 前々からどうも風邪っぽくて体調不良だったのだが、急に酷くなった。 出来ちゃったかな。

吐き気というのが、困ったものなのだ。 一番栄養をとらなきゃいけないときに、食欲を無くしてくれる。 無理矢理緑のたぬきを食ったら、やっぱり吐いた。 一度吐いたらもう胃の中は空っぽだろうに、まだ何かが喉を這い登ってくる感じがする。 何かってのは、たぶん胃液なんだけどね。 胃液。 苦くて酸っぱくてセピア色。 なんだか青春の想い出のようだな。 って、どんな青春なんだか。

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コンタクトレンズのCMだったかな。 「透明人間になる薬をGETしたぜ!」 ってやつ。 子供の頃は俺も、透明人間になれたらいいなぁなんて思ったことがあった。 それはもう当然のように、不純(ある意味で純粋)な動機なんだけどね。

さて、透明人間である。 透明とは、そのものに当たった光のベクトル(向きと強さと)をいっさい変えないことだ。 透明人間は、体に当たった光がそのまま変化せず体を通り抜けていき、そうして他人からは見えなくなるのである。

ここで、注意しなければいけないことがある。 ものを見るとは、大雑把に言うと、目に入ってきた光を網膜の細胞で受け止めて、電気信号に変えることだ。 人間が完全に透明になると、その人の眼球は光を屈折させず、網膜は光をとらえない。 目が光をとらえられないとは、つまり、光が無いと同じ。 うっかり(じゃなくても)透明人間になったら、 真っ暗で何も見えない のである。 これでは透明人間になった意味がない。 物理的にも精神的にも、世の中真っ暗なのだ。 目隠しして手探りでうろうろしているのに、他の人からはぶつかるまで気付かれない状態。 それが透明人間なのだ。 かなり不利である。 家の中でこっそり透明になってるならいいが、外に出ていくのは極めて危険である。

CMの彼らは、薬がまだ十分に効いてないために、この恐ろしい事実に気がつかないで、何処かに走って行ってしまった。 生きて帰ってこれるのだろうか。

他人のことより自分のことだ。 寝てると腹が痛いけど、起きてると頭が痛い。 腹が減ったけど、何も食いたくない。 見えないのは明日だよ。