2004 11 26

やっぱり君が好き

帰りの電車の中、中学生らしい女の子5人ぐらいが話していた。

「ねえ知ってる? 鎖骨のくぼみで金魚が飼えるぐらいの人がセクシーなんだって」

「鎖骨?」

「ここ、ほら、ここの窪み」

「え? 窪んで無いじゃん」

「ほっといて! 自分こそどうなの?」

「や、ちょっと引っ張らないでよ!」

「あ、ちょっと窪んでるかも。 でも金魚飼えないよね、それじゃ」

「私も駄目かも」

「でも、ここに金魚が入るのって、痩せ過ぎじゃない?」

「うーん… でも完全に埋まってるのも…」

「いいんじゃない? だってセクシー目指してないでしょ?」

「勝手に決めないで!」

俺が立ってるすぐ前なので、もう五月蝿いやら鬱陶しいやら。 それでも、そもそも俺の対象外の中学生であっても、互いの襟を引っ張ったり自分で覗き込んだりしたときにちらちら見える素肌に、ちょっとぐっときてしまう哀しい男のサガ。 と、いきなり分母を男全体に広げた後に言うのもなんだが、俺は鎖骨はどうでもいいかな。

ちょっと前、 「私は渡邊君の理想の女」 と自称する女の人に会う夢を見た。 外見はメーテルみたいだったな。 落ち着き払った余裕の笑みを浮かべて、俺のことを 「渡邊君」 と呼ぶのだが、この呼び方がなかなか新鮮でいい感じだった。 うん、渡邊君って呼ばれるのもいい。 で、このメーテルだが、実は着痩せするタイプ。 ふわっとコートの前を開くと、中は下着だけのハニーフラッシュ。 ロングブーツに下着。 それがコートに半分隠れてるのが、なんかこういろいろと想像とか妄想とか掻き立てられるのだな。 あんなことや、こんなこと、そんなことまで!じゃなくて、何が言いたいかというと、その理想の人の鎖骨がどうだったかについて何の記憶も無いってこと。 鎖骨の優先度は、俺の中ではかなり低いのだろう。 あの中学生の一人みたいに完全に肉に埋もれてるのはちょっと嫌だけど、でも意識しない限り見ない。 普通に見える範囲だと、俺の注意は鎖骨よりも手にいってるような気がするな。

駅を出てコンビニに向かう途中、すれ違った女の人が携帯電話に向かって、

「だったらあの人と結婚すればいいじゃない!」

と怒鳴っていた。