いつものように川沿いを散歩していて、ふと見上げると雲の端が虹のようになっていた。
が、これまたいつも通り、写真だと今一つはっきりしない。
ついでに最大望遠で撮った飛行機。 白一色で輝いて見える。
主翼の先がちょっと上に折れているのは燃費改善のため。 飛んでいる時の翼の端には渦ができるのだが、この渦は下向きの力として作用してしまう。 つまり機体が重くなったのと同じ。 翼端を上向きにすると、渦が小さくかつ下ではなく外向きの力になって、燃費改善につながるのだ。 翼の先にそれなりに丈夫なものをつけるのだから重くなるのだが、それでも飛ぶ距離が長いと燃費の改善効果のほうが大きくなるのだな。
この飛行機、だいたいマッハ0.8で飛んでいる。 マッハは音速との相対値なので、これを絶対速度にすると、温度も気圧も低い上空で風がなければ240m/sぐらい。 時速なら860km/hぐらいだろうか。
あれ? 絶対速度?
立ち止まって飛行機を見上げている俺は、立ち止まっているのだから速度0なのだが、それは地面に対する相対速度が0ってだけなんだよな。 地球は自転していて、その速度は赤道辺りでおよそ460m/s。 北緯35度のこの辺りなら半径5400kmの円上を380m/sぐらいで移動していることになる。
地球は太陽を焦点の一つとする楕円軌道を面積速度一定で公転していて、だから軌道上の位置によって速度が違うのだが、平均値で円運動しているとすると、半径およそ150000000kmの円上を30km/sぐらいで移動していることになる。
太陽系が属する天の川銀河も自転していて、太陽は、銀河の中心から26100光年辺りを240km/sで動いているのだそうだ。
で、この天の川銀河自体も動いていて、その速度はおよそ600km/sだという。
つまり俺は380m/sでくるくる回りながら30km/sでくるくる回りながら240km/sでくるくる回るという3重の周天円を描きながら、さらに600km/sのスピードでどこへとも知れず動いているのだ。 3つの回転と移動がちょうど同じ方向に重なることがあるのかどうかは知らないが、仮にそうなったとすると、瞬間最大速度は870km/sとなる。 もう速すぎてナニガナンダカ。 1秒間に870kmって。 拳銃から発射された弾丸の初速が400m/sぐらいだからね。 弾丸の2000倍以上って、やっぱり想像つかない。
で、こうなってくると恐ろしいのがタイムマシン。
タイムマシンで未来や過去に移動した時、到着地点が出発地点と同じ位置だったら、もう地球は遥か彼方に行ってしまってるんだよな。 時間移動がわずか1秒でも、時間移動前と後との位置は、最短で330km、最長で870km離れることになるのだから。
いや、逆にこのぐらいの短い時間の時間移動なら、タイムマシンを瞬間移動装置として使えるのか。 自転、公転、銀河の回転と移動を厳密に観測し、計算し、時間移動後にちょうど目的地に出現するタイミングを測って時間移動すればいいのだから。 1秒とか、時間移動してる実感は全然無いだろうけどさ。 まあしかし、実感できるぐらい移動するとほぼ確実に死ぬし、逆に実感できないからこそ社会生活を継続できるのだし、この辺りは納得するしか無いのだろう。
問題は、出発地と目的地を時間移動で結べるタイミングがどのくらいの頻度で発生するかってことか。 うまくいけば1秒で移動できるけど、うまくいけるタイミングが70年に一度しか無いんじゃ商売にはならないし。
まあ、そもそも計算できるのかってとこから問題だったりするのだが。 天の川銀河の移動速度が600km/sってのも、一体何に対しての移動なのか、きっと言ってる本人だってよく判ってない。 宇宙の中のことは全て相対的にしか理解できないからね。 絶対座標系なんてものがあれば別だが、あったとしても理解できないだろうし。
そういえば、星野之宣の漫画に絶対座標が出てくるのがあったな。 アイディアは面白かったのだが、絶対座標がキリスト像を抱えた十字架で表現されていたのは興醒めだった。
あ、ちょっと思い込みをしていたことに気づいた。 タイムマシンで1秒の時間移動をするとき、タイムマシンの操作者の主観時間も極僅かだと思い込んでいたのだが、すっごい時間がかかる可能性だってあるんだよな。 例えば3日とか。 そんなのは移動手段としては使えないが、レジャーには使えそうだな。 リアル精神と時の部屋とか、子供から大人までかなり幅広く呼び込めるんじゃないか。