遥か彼方まで続く送電線を支える巨大な鉄塔。 そして、見上げる俺を優しく包む電磁波。
「大きくなったら、白い花を咲かせたいな」
「花なんか咲かない。 お前は俺と同じ、葉っぱだよ」
「何言ってんだよ。 頑張れば花だって咲くかもしれないじゃないか」
「どう頑張ったって、咲かないものは咲かないんだよ」
「世の中、何が起きるか判らないって言ったのは、お前じゃないか」
「ああ、言ったよ。 踏まれたり、抜かれたり、食われたり、枯れたり」
「……」
「何が起きるか判らないが、起きるのは悪いことばかりってことさ」
おたまじゃくしからカエルになったばかりのヒキガエル。 小さくてかわいい。
ヒキガエルは、30年ぐらい生きるらしい。 それだけ生きればでかくもなるか。
そう言えば、広島の家でも、蝉が登ってきて脱皮したと言っていたな。
「わしゃ、初めて蝉が出てくるところを見たけど、凄いもんじゃのう」
と父。 背中が割れる瞬間も見たのだそうだ。 それは俺も見たかったな。
一つ一つの花は、せいぜい1cmぐらいの大きさ。