職務質問に意地でも応えない系の動画をたまに見るが、大抵の場合は時間の無駄だよな。 押し問答してる時間を他のことに充てればいいのにとしか思えない。 まあ、何も悪いことをしていないのに何か悪いことをしてると決めつけるような態度で臨まれたら、腹も立つだろうけどさ。 おっと、時間の無駄ってのは、そんなのを見ている俺にも言えることか。
しかし職務質問から検挙につながる場合も結構あるそうで、あれはあれで有効なんだろう。 犯罪に日々接している人には、犯罪者が発する特有の臭いが嗅ぎ取れるのかもしれない。
その臭いを嗅ぎ分けたはいいが、たぶん確信したためにやりすぎてしまって、やりすぎのせいで無効にされた話。 NHK NEWS WEB から。
覚醒剤を所持した罪などに問われた春日部市の会社員の男性の裁判で、さいたま地方裁判所は男性がトイレに行きたいと訴えたにもかかわらず、警察が所持品検査を続けて覚醒剤を提出させたことについて違法だと指摘し、無罪を言い渡しました。
春日部市の45歳の会社員の男性は、去年11月さいたま市内のゲームセンターの駐車場で覚醒剤を所持したなどとして覚醒剤取締法違反の罪に問われました。
27日、さいたま地方裁判所で開かれた裁判で、結城剛行裁判官は男性がトイレに行きたいと訴えたにもかかわらず警察が職務質問を続けたことについて、「トイレに行く前に所持品検査に応じることを求め男性の前に立ちふさがるなど心身ともに追い込んで覚醒剤を提出させた」と指摘しました。 そのうえで「職務質問の所持品検査として許容される限度を大きく超えて違法だ」と述べ、無罪を言い渡しました。
これについて、さいたま地方検察庁の古谷伸彦次席検事は「判決内容を精査し適切に対処したい」としています。
犯人は、と敢えて言うが、トイレに行って何をするつもりだったのか。 そりゃもちろん持ってた覚醒剤を捨てるつもりだったんだよな。 文字通り水に流す。 犯罪者側が使う言葉じゃないけどさ。 ついでに小便もして、尿検査で引っかかる可能性も少しでも下げたかったかもしれない。
職務質問した警官もそう思ったから、トイレに行かせなかったのだろう。 で、その成果として、覚醒剤を提出させることができた。
この覚醒剤を提出させたという成果に、だから警官のやったことは問題無いじゃないかと思ってしまいそうになるが、越権行為であることは確かなんだよな。
越権行為の良し悪しを成果の有無で量ると歯止めが効かなくなるので、適切にコントロールされることが必要。 という建前で、コントロールする立場にいるのが裁判所。 だから裁判所としては、まず越権行為であることを問うし、越権行為で得た証拠は証拠にならないという原則を貫かざるを得ない。
でもなぁ…
こうした原則は一応世の中のためにあるのだが、その原則をキッチリ守ったために、 何かあったら 「トイレに行きたい」 と言っておけば無罪を勝ち取れるという、あまり世の中のためにはならない前例を作ってしまってるんだよな。 この矛盾を、裁判官はどう考えるのか。
かつて死刑反対派だった裁判官が、身内が殺されて死刑賛成派に転向したように、この裁判官も身内がシャブ漬けになったら、職務質問の違法性は覚醒剤所持犯を捕まえたという成果で相殺できると考えるようになるのだろうか。