家のすぐ下の曲がり角に、花束が三つ置いてあった。 その傍に 「死亡事故発生現場」 の立て看板。 ここで誰かが死んだのか。 花も、看板も、今朝そこにあったかどうかの記憶が無い。 花束は、買った人の手から離れた瞬間にゴミだ。 あぁ、今朝は池田貴族が死んだとテレビで言っていたんだった。 産まれた子供を見るまでは生きていたい。 子供がしゃべるようになるまでは生きていたい。 子供が幼稚園の制服を着るまでは生きていたい。 そんなことを、今の俺とそんなに歳の変わらない、何年か前の池田貴族が言っていた。 事故で死んだ人は、苦しまずに死ねたのだろうか。 望みをじわじわと削り取りながらやってくる死。 死ぬことに気付く暇すらも無い突然の死。 結果は同じでも、そこに至る過程はずいぶん違うもんだな。