魅惑の印象派

正倉院展に行くつもりで上野に行ったのだが、まずチケット売り場で20分ぐらい並んで待ち、ようやくたどり着いた窓口で 「この後、入場まで70分程待ってもらうことになりますが、よろしいですか?」 と言われて心が折れた。 正倉院展は諦めて、次点と考えていた東京都美術館へ。 こちらは現在 コートールド美術館展 魅惑の印象派 を開催中。

コートールド美術館展は、名前の通りコートールドが収集した、主にフランス印象派の作品の展覧会。 印象派は、画集なんかで見る縮小版は全然駄目だが、実物大の絵は良いんだよな。 同じように思う人が多いのか、こっちも結構混んでいた。

だいたいどこの美術館でも何かしら研究しているが、コートールド美術館は美術研究所として発足したようで、他の美術館よりも研究色が強いらしい。 そのせいか、今回の展覧会も研究成果発表会的な色が濃い。 展示構成も

  1. 画家の言葉から読み解く
  2. 時代背景から読み解く
  3. 素材・技法から読み解く

となっていて、出品リストには展示品に添えられていた資料の一覧も記載されていた。

名画を読み解きたい人には嬉しい企画なのだろう。 が、俺は絵を見てあれこれ想像するのは好きだが、学術的に読み解きたいとは思わないんだよな。 絵を描いた背景とか、絵の中に隠されたメッセージとか、雑学として知っておきたいとは思うが、その程度。 なので解説はだいたい斜め読み。

と、せっかくの企画を全否定するようなことを言っているが、展示されている作品は良かった。 来て正解だった。 各コーナー3周ぐらいして、たっぷり堪能した。

以下、感想など。

セザンヌ。 だいたい好き。 風景も人も。 この人、絵をどう描くべきかといったことを長々と手紙に書いていたが、10年後には 「こんなことに拘ってちゃ駄目だ」 と意見を変えるんじゃないかと思う。 残念ながら、彼に10年後はこなかったけど。

モネとマネ。 名前が紛らわしい。

マネの アルジャントゥイユのセーヌ河岸 は、近くで見るとかなり雑な筆使いなんだね。 ちょっと離れてみると良い感じの波打つ水面なのに。 この辺が印象派っぽくて良い。 割とぼやけた感じの風景画が多い印象派の中で、マネの作品がちょっと引き締まって見えるのは、黒を多用しているからだそうだ。

展覧会の看板、同じくマネの フォリー=ベルジェールのバー は、パンフレットで見たときは 「なんかぼやけた顔だな」 ぐらいの感想しかなかったが、実物を見ると色々考えさせられるな。 少なくともぼやけた顔ではなかった。 手前に並ぶ果物や酒だけではなくこの女も、このバーの商品なのだろう。

モネの 秋の効果、アルジャントゥイユ も印象的だったが、モネで言えば、この絵の解説の中で小さく参考展示されていたアトリエ船の絵の方が印象に残っている。

ルソー。 税関 の一点だけが展示されていたが、画風が全然印象派っぽくなくて浮いてた。 でも嫌いじゃない。

ルノワール。 春、シャトゥー が良かった。

印象派って、出始めの頃は何の技巧もなく印象だけを絵にしていると批判されたそうだ。 印象だけを絵にすることの何が悪いのかと思うが、そう思えるのは、俺が現代に生きているからだろう。

しかし実際に印象そのものを表現するのって、難しいよな。 例えば春から初夏にかけての気配みたいなものを表現しようとしたとき、自然を細密描写すると、きっとうまく伝わらない。 でもある程度の描写がないと何も伝わらなかったりする。

印象派的な技法は、このジレンマを乗り越えるためのものでもあるのだろう。 ルノワールのこの作品は、そうした技法の到達点の一つだと思う。

人物画もいくつか展示されていたが、性癖を曝け出したいつものやつ。 デブ専じゃない俺とは、きっと話が合わない。

ドガ。 といえば踊り子。 今日展示されていた 舞台上の二人の踊り子 も、いかにもドガな感じだった。 こいつが踊り子を見る視線は、きっと健全ではない。

ゴーガン。 といえば黒。 今日展示されていた テ・レリオアネヴァーモア も、描かれている女は黒かった。 が、これらは性癖の自白には見えないな。 金には苦労したらしいゴーガンには、たくましく生きるタヒチの女が眩しく見えていたのかもしれない。

画家の印象しかないゴーガンだが、彫刻もあるんだね。 メットの肖像 はインパクト大だった。 デスラー総統にちょっと似てる。 瞳の表現がちょっと残念だが、大理石の白一色だと、こうするしかなかったのかもしれない。

オノレ・ドーミエ。 彼は印象派なのか? という疑問は置いておくとして、未完成らしい ドン・キホーテとサンチョ・パンサ は、何かこう訴えてくるものがあった。 この人は、他にも多数、未完成のまま放置しているらしい。

未完成作品のコーナーに展示されていた他の作品も、未完成ゆえの荒々しさで印象に残っている。

ロダン。 彫刻に印象派とかあるのか? という疑問は置いておくとして、展示されていた作品はどれも印象的だった。 発動したベヘリットかと思うぐらいの勢いで叫んでいる 叫び とか、日本人の女の平たい顔だけをマスクのように再現した 花子 とか。

彫刻で思い出したが、絵の額縁がどれもやたら凝った装飾だった。 あれは画家が指定しているのだろうか。 それとも絵を買った画商がやったことなのかな。

東京都美術館

東京都美術館の入口から見た景色。

上野公園

東京都美術館の出口から見た景色。