2000 07 31

小さな恐怖

先週末、だったと思う。 電車を乗り換えるとき、顔の下半分が異常に膨れ上がった人を見た。 目から耳にかけての辺りから下が、大人の頭一つ分ぐらいに大きく膨れ上がっていた。 マスクをしていたのだが、その異常さを隠しようもなく、かけていたマスクがすごく小さく見えた。 見た目でははっきりしないが、骨格から異常なんだと思う。 まるで子供が描いた下手な絵のような。 或いは、エレファントマンからディテールを削ぎ落としたような。 じろじろ見ては悪いと思いながらもついつい見てしまい、見るたびに小さな恐怖を感じた。

その日、帰りの電車の中。 隣に座ったおばさんが、靴を脱いで足をシートに上げ、ズボンの裾を引き上げた。 露になった脹脛に、これは虫刺されだろうか、赤い斑点がたくさんあった。 本当にたくさん。 そのほとんどが、火山のように先端の皮が剥がれて、じくじくと血混じりの黄色い液体が滲んでいた。 そこにかさぶたが出来ているものがあって、それが痒いのだろう。 かさぶたを剥がさないように、周囲をバリバリ掻いたり、赤くなった部分を摘み上げたりしていた。 よせばいいのに、その一つ一つが 「ちいちい」 と鳴声を上げるところを想像してしまい、鳥肌立った。