除夜の鐘が五月蝿いと苦情が来るらしい。 その苦情を受けて、鐘を撞くのを止めたり、昼のうちに撞いたりしてるところもあるのだとか。
俺の家は高幡不動の鐘が程良く聞こえてくるのだが、これがもっと近く、鐘の音で窓ガラスがビリビリ振動するぐらいの近さだと、連続して108回も聞かされるとウンザリするかもしれないな。 それが年に1回のことでも。 正月の雰囲気作り以外には何の役にも立た無い、形骸化した伝統行事だけに余計に。
しかし苦情を言ってくるのが、本当に鐘の音が五月蝿いからだけなのかは、ちょっと気になるところではある。 音への感度は人それぞれだし、その人にとっては本当に五月蝿くはあるのだろう。 でも怒りはもっと別のところ、例えば鐘を撞く人たちが楽しそうだから腹が立つんじゃないかって気もするよ。
しかしまあ、何というか、やりにくい世の中だよなぁ。
一年の終わりは気持ち良い晴天。 気の早い梅はもう咲いている。
魚を狙う白鷺。
こいつら、魚が間合いに入るのをただひたすらに待つイメージだったが、待つばかりじゃ無いんだね。 水中で足をガガガッと動かして、水底に隠れている魚を追い立てていた。
裏から見たサンタクロース。 裏から見てもサンタクロースなのだが、父は納得いかないらしい。
「あれは何かのぉ?」
「サンタクロースじゃない?」
「サンタクロースじゃないじゃろ。 なんか気持ち悪い紐みたいなのが付いちょるし」
「そりゃ光らせるのを裏から見てるからでしょ」
なんて言いながら前へ。
前から見たサンタクロース。
「あ、前から見たらサンタクロースじゃの」
「だから言ったでしょ」
「そうじゃのぉ。 裏と表じゃ全然違うんじゃのぉ」
「そりゃサンタも人間だからね」
何気なく言った言葉が父のツボにはまったらしい。 「確かに、誰にでも裏表はあるけぇのぉ」 なんて言いながら大笑いしてた。
深夜の高幡不動。 いつもならとっくに明かりを消してる時間だが、今日は除夜の鐘で徹夜対応。
まだ12時にはなっていないが、もう人は集まり始めているらしい。 耳をすませば、かすかに喧騒が聞こえる。