1998 11 08

見渡す限りに雲が見えない、ものすごくいい天気。 洗濯して、布団干して、久しぶりに米をといで、あとは昼まで日向でごろごろ。 ぬくぬく。 昼飯食って、布団を取り込んで、散歩にでかけた。

浅川の土手に座って、ぼーっとしていたら、鳩が一羽飛んできた。 片目で俺を見ながら、ジグザグに近寄ってくる。 何かくれると思っているのだろうか。 その鳩に気を取られていたら、突然頭の上でばさばさ羽ばたく音がして、鳩の群がやってきた。 およそ40羽が、次々と着地する。 俺の周りはもう鳩だらけ。 近くに降りた奴は鳩的直立不動。 外側に降りた奴は、じわじわ近づいてくる。 どいつもこいつも血走った目で沈黙している。 クルックーのクも無い。 やたらに緊張した空気。 出撃前の部隊と司令官のような。

司令官?

そういう目で見ると、なんとなく鳩どもが命令を待っているように見える。

「行けっ!」

試しに手を振り上げてみたら、本当に鳩どもが一斉に飛び立ち、一度俺の上で旋回して、何処かに行ってしまった。

鳩が俺の命令を聞くなんて、自分で自分に感動だよ。 俺って、ちょっとすごいかも。 そーいや、鳩って確か平和の使者だよな。 ってことは、 俺が平和? 何かと紛争が絶えないのは、俺の自覚が足りなかったから? うーむ…

「すごい」 という声に振り向くと、ちょっと離れたところに小さい子が立っていた。 鳩に出撃命令を下すところを、見られたらしい。

「すごいだろ。 でも、このことは誰にも言うなよ。 秘密だぞ」

ちょっと怖い顔で言っておいたが、さて、秘密は守られるだろうか。