1999 08 20

言うに事欠いて

食堂のメニューがあまりにもろくでなし揃いで、思わず笑ってしまった。 それでも食わないわけにはいかない。 玉葱混じりの生姜焼きの皿を取った。

「最近、気が付いたんだけどさ」

「ん?」

「RAINBOWってのは、雨でできる弓形だから、RAINBOW なんだよな」

「あぁ、言われてみればそうだな」

「気が付かなかっただろ?」

「おう」

「一つ賢くなっただろ?」

「おう」

「これからは、虹を見るたびに思い出せ」

「なに? 虹を見るたびに、渡邊のことを思い出すのか?」

「そう。 俺が死んでも、空に虹のある限り、お前の記憶の中で生き続けるんだよ」

「また馬鹿なこと言ってるよ」

「それで、俺は何でこんなもんとっちまったんだろうな」

「へろへろのタマネギが駄目なんだっけ?」

「そう。 しゃきしゃきしたのなら問題ないんだけど、これはちょっとね」

「よけて食えばいいじゃん」

「よけて食ってんだけどさ。 お前、こーゆー玉葱って平気なのか?」

「あぁ、あんまりいっぱいだと、嫌だけど」

「ふーん。 つまり俺は、熟女は駄目だけど、女子高生ならってことだな」

「玉葱からそう来るか」

「それでお前は、あんまりたくさんじゃなかったら熟女でも」

「おう、全然平気で食えるよ。 でも、熟女ってのも、なぁ」

「年齢制限すべきだよな」

「そういや、サッチーは今どうなの?」

「相変わらず黙ってるみたいだよ。 それよりも、俺の紀香が…」

「紀香が?」

そう、俺の紀香様が…

紀香様と言えば、その前日だったかな。

「藤原紀香の写真集買った?」

「買ってない。 あの写真集、セクシーショットが少ないんだよ」

「あ、そうなんだ。 FUNって見てる?」

「紀香さんが後ろで踊ってるやつだよね? 胸に注目してるよ」

「ふーん、やっぱり男だねえ」

「男ってゆーか、漢ね。 硬派」

「えー、全然硬派じゃないじゃん」

「全然?」

「全然。 なんか、ひ弱なサディストって感じ」

ひ弱なサディストって…