1999 08 28

もてないカブトムシ

久しぶりにカブトムシを見た。

子供の頃、よくカブトムシやクワガタを捕りに行った。 そういうのが好きな子は(といっても、田舎の男の子はだいたいそうだろうが)たいてい秘密の場所を持ってる。 俺もそうだった。 その場所を他の子に知られないように、けっこう気を使ったものだ。 友達と捕りに行くときは、 「とっておき」 の場所を慎重に避けて歩き、避けていることを悟られないように、また気を使う。 で、会話から相手の場所を探ろうとしたり。 うーん、思い出すほどに嫌なガキだな。

で、捕まえてきたカブトムシやクワガタを飼ってるうちに気が付いたのだが、虫にも、もてるのともてないのがいる。 オスとメスを一緒にしていると、もてるオスはすぐに交尾して、交尾するとまもなく死んでしまう。 もてないオスは、メスに近寄っては逃げられ、逃げられ続けて、秋口までずっと生きている。 他のオスが次々と交尾して死んで、最後に一匹もてない奴が残るのだが、そんな状況でもやはりメスに拒絶される。 世界に男が一人だけになっても、あなたは嫌! ということだ。

振られ続けるが故の長生き。 それはつまり、哀しい思い出を積み重ねるだけの長生き。 恐ろしい。 子供心に、もてないカブトムシにだけはなりたくないと思ったものだ。