1999 11 30

時よ止まれ

しばらく前に買ってきたゲームをやっている。 ジョジョの奇妙な冒険。 マイキャラは当然DIO様だ。

ザ・ワールド! 時よ止まれ!
無駄無駄無駄無駄 …(しばらくやり放題)… 無駄無駄無駄無駄ァ!
そして、時は動き出す。

ところで、誰でも一度は時間を止めてみたいと思ったことがあるんじゃないだろうか。 俺はある。 純粋に不純な動機だったことは言うまでもない。

では、本当に時間を止めるとどうなるのだろうか?

時間を止めたとき、自分の時間も止まってしまうのでは、せっかく止めた意味がない。 そこで、 「時を止める」 を次のように定義する。

時を止める
自分のごく近くでは普通の時間が流れていて、自分から離れるに従って流れが遅くなり、ある程度離れると完全に止まっている状態、いわば時間の境界層を作ること。

こうして時間を止めたとしよう。

時間が止まると、あらゆる速度が0になる。 気をつけなければいけないのは、 空気分子が静止する ということだ。 これにより、音が伝わってこなくなる。 音は、空気の分子の運動によって伝わるものだからだ。 聞こえるのが自分の呼吸と足音だけってのは、ちょっと寂しいかもしれない。

また、吐き出した空気が、口から出るとすぐに止まってしまうので、周囲にはどんどん二酸化炭素が増える。 時間を止めたことで油断していると、だんだん息苦しくなって、目眩がして、やがて死ぬ。 新鮮な空気を得るために、適当に歩き回らなければならない。 寂しがってる場合じゃない。 止まると死ぬ。 マグロ並。

さらに、 光子が静止する。 光りといえども速度あるものだ。 時間が止まれば止まる。 自分のごく近くの光だけが目に入るのだが、それはごくごく僅かなので、ほとんど真っ暗闇。

おいおい、全然使えないじゃないか。 強いて言えば、ちょっと一人になりたい時に便利か。 現実逃避にしか使えないってのもなぁ… と、ここまで考えて、恐ろしいことに気が付いた。

慣性の法則。 通称、車は急に止まれないの法則。 普段ほとんど気にしていないが、地球は自転している。 時間を止めると地球も止まる。 が、それまでの時間の流れの中にいる自分は、慣性の法則によって、それまでの運動、つまり自転による西から東への運動を継続することになる。

ちょっと計算してみよう。 地球の半径を 6400km として、地球の周囲が、 6400 × 2 × 3.14 ≒ 40200km

赤道付近では、これを24時間で1周するから、 40200 ÷ 24 = 1675km/h

日本なら、その7割ぐらいの速度ということで、だいたい 1200km/h つまりマッハ1。

なんてこった。 俺が今ここでうっかり時間を止めると、その瞬間、東に向かってマッハ1ですっとんでいくのか。 音速の現実逃避!って、笑ってる場合じゃない。 立ち止まったまま酸欠で死ぬことはなくなったが、より速くより確実に死ぬじゃないか。 地球上で安心して時間を止められるのが、北極と南極だけとは。

いや、まて。 地球は太陽の周りを公転してるんだった。 そっちも考えないと。

公転半径を1億5000万kmとして、公転軌道の長さが約9億km。 これを1年で1周するから、公転速度はおよそ10万km/hか。 地表からの脱出速度が11km/s、時速でいうと約4万km/hだから、その倍以上。 こうなるともう北極だろうが赤道だろうが関係なしだな。 時間を止めた瞬間に地球の引力を振り切って宇宙の彼方。 一筋流れる涙星。

いや、まて。 太陽系は銀河系の端っこの方を回っているんだった。 その半径が…

結論
時間は止めない方がいい。